脳の新たな敵を発見!アストロサイト異常活性化のメカニズムとは
神経細胞を支える重要な細胞、アストロサイト。千葉大学の研究チームは、その異常活性化の背後に存在するメカニズムを明らかにしました。これはアルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患の治療に対する新たな道を示唆しています。
研究の背景
私たちの脳内には、神経細胞をサポートするアストロサイトが存在します。この細胞は神経栄養因子を放出し、神経細胞の活動を助ける役割を担っています。しかし、神経変性疾患においてはアストロサイトが異常に活性化され、炎症性サイトカインが放出され、神経細胞を損なうことが知られています。このため、アストロサイトの異常活性化は、新たな治療標的として注目されているのです。
スフィンゴミエリンの発見
2019年には、スフィンゴ脂質がアストロサイトの異常活性化を引き起こすことが明らかになりました。この研究では、特にスフィンゴミエリンに注目し、アストロサイトの活性化の変化を観察しました。その結果、アストロサイト内のスフィンゴミエリンの増加が、異常活性化を促進する要因であることがわかりました。
研究の成果
この研究では以下の重要な発見がなされました。
1. スフィンゴミエリンが増加すると、IL-1αやTNF-αによってアストロサイトが異常に活性化される。
2. 細胞内でのスフィンゴミエリンの産生をブロックすることで、アストロサイトの活性化が抑制される。
3. 異常活性化はNF-κB経路を介して行われていることが判明した。
4. HDAC1およびHDAC3の発現量が増加することによって、NF-κB経路の活性化が抑えられる。
5. これにより、アストロサイトの異常活性化が制御されるメカニズムが解明された。
これらの結果は、スフィンゴミエリンの阻害がアストロサイトの活性化を抑制し、神経変性疾患の治療に向けた新しい戦略を提示するものです。
今後の展望
アストロサイトの異常活性化は、さまざまな神経変性疾患に共通する現象であり、今後は神経変性疾患のモデル動物を用いて、スフィンゴミエリンの減少が治療にどのような影響を持つのかを検討していきます。また、スフィンゴ脂質の他の種類がアストロサイトに及ぼす影響についても調査が予定されています。
この研究成果は、アストロサイトにおける脂質代謝を治療の焦点とする新たな道を切り開くことが期待されています。脳内の脂質のメタボリズムの解明が、将来的な神経変性疾患治療への手助けとなることを願っています。
研究プロジェクトについて
本研究は、武田科学振興財団や喫煙科学研究財団などの支援を受けて行われました。
論文情報
この研究成果は、2025年11月3日に「Journal of Lipid Research」に発表されました。
著者: Ryo Kadowaki, Hana Hirose, Gai Takimoto, Takafumi Kohama, Hiroyuki Nakamura
DOI番号: 10.1016/j.jlr.2025.100933
これからの研究が、より良い治療の実現につながることを期待せずにはいられません。