奈良の知恵を受け継いだ新素材「薄炭クラフト」誕生の背景

株式会社ぺーパルが2025年10月に発表予定の新素材「薄炭クラフト」は、奈良時代の再生紙文化からインスパイアされた革新的なプロダクトです。この新しい紙は、奈良・平安時代に存在した再生紙技術「宿紙」を現代の技術で再現したもので、持続可能な資源利用の重要性を象徴しています。

開発のきっかけ

ぺーパルの開発担当者は、ある機会に正倉院の宝物についての雑談中に、奈良時代の「宿紙」についての話を耳にしました。この紙は、使い終わった紙を再利用して漉き返し、再生したもので、当時から日本には資源循環の文化があったことを知り、深い感銘を受けました。その結果、「この宿紙を現代に再現したい」という思いが「薄炭クラフト」の開発へとつながりました。

宿紙文化の歴史

古代から紙は貴重な資源として扱われ、使い終わった紙を再利用する技法は「宿紙」として長い歴史を持つ文化でした。奈良時代にはすでに正倉院の宝物に用いられるなどしており、平安時代には公文書にも使用されていたと言われています。このように宿紙は、戦国時代から江戸・明治時代まで形を変えながら受け継がれ、日本の資源を循環させる文化の基盤を築いてきたのです。

「薄炭クラフト」の特徴

「薄炭クラフト」は、未利用資源から生まれる「バイオ炭」を基にした再生紙です。このバイオ炭は、もみ殻や野菜くずなどを炭化して得られる新しい素材で、環境に優しい特性を持っています。この新素材は、食品廃棄物から生まれるだけでなく、CO₂の大気中への放出を減少させる役割も果たしており、今後の農業や地域循環にも貢献します。

サステナブルで美しい紙

「薄炭クラフト」は、柔らかなグレーの色合いが特徴で、宿紙のような自然な風合いを持っています。この紙は、ただの素材としての利用にとどまらず、ブランドの想いを伝えるための選択肢としても活用されます。製品に貼ることができる認証ラベルを通じて、持続可能な姿勢をアピールできるという点も大きな特徴です。

バイオ炭の普及とその意義

この新しい紙は、環境に対する意識を高めるだけでなく、「バイオ炭」というリソースの認知も拡大させることを目指しています。農業において、バイオ炭を畑に散布することで、CO₂削減につながることも期待されています。ペーパルは、このプロジェクトを通じて地域が自らの資源を生かし、新たな循環型文化を創出する支援を行います。