2025年首都圏中古マンション市場の実態
2025年に入り、首都圏の中古マンション市場に関する多くの報道がなされていますが、その大半は価格高騰に焦点を当てています。これは、東日本不動産流通機構(レインズ)が「1990年代後半の価格水準」を引き合いに出すなど、バブル期の再来を思わせる表現が使われるためです。しかし、実際の市場を見ると、単に価格が上昇しているという話だけでは済まされません。実は、マーケットは極めて複雑で、地域ごとの需要や供給において大きな差が生じているのです。
都県別の成約坪単価の違い
まず、成約坪単価を都県別に分析した場合、神奈川、千葉、埼玉の各県では価格が横ばいか、少しの下落傾向を示しています。一方、東京都だけが異なる動きを見せており、価格は急上昇しています。この大きな差は、東京都が持つ独自の需要の強さに起因しています。
東京都の市場構造
特に注目すべきは、販売日数や値下げ回数といった市場参加者の行動データです。東京都の物件は、売れるまでの日数が短く、売主も頻繁には値下げしない状況が続いています。このことからも、東京都の中古マンション市場が依然として活況であることが伺えます。買い手は積極的に市場に参入し、売主側も強気の姿勢を維持しています。
23区の需要構造の変化
さらに、東京都内の23区では、特に富裕層や投資家による需要が集中しています。過去と比較して、面積帯別成約坪単価に逆転現象が見られます。今日では、大型のマンションの価値が高められており、価格よりも資産性を重視する層が市場を牽引しています。
価格決定における東京都の強さ
新たに売り出された物件がどのような価格で成約するかを示す値下げ率も、東京都は他の地域と比べて低い数値を示しています。これは、売主が当初の設定価格に近い価格で成約できるため、次の売主も強気の価格設定を行う環境が整っていることを意味します。
神奈川、千葉、埼玉の現状
対照的に神奈川、千葉、埼玉では成約坪単価の上昇が見られず、これには市場環境の変化が影響しています。特に、築年数別に見ると、新築マンションは依然として人気で高値を保っている一方、古い物件の価格は横ばいか下落傾向にありますが、駅近や利便性の高い立地を持つ物件には一定の需要があります。
購入者のリアルな判断
面白いことに、築浅物件の成約件数は顕著に減少しています。これは多くの購入者が高額な価格設定による頭金の高さが影響し、理想通りの物件を選ぶことが難しいためです。結果として、立地や面積を重視し、古い物件を選ぶ人が増加しています。
このように、首都圏中古マンション市場は非常に高度に分化しており、構造の理解が求められます。単なる「価格高騰」の情報に惑わされず、各地域の実態を見極めることが今後ますます重要になります。