近年、日本の企業では「学び直し」や「リスキリング」という言葉が頻繁に用いられるようになり、特に大企業においてその重要性が増しています。これは、技術革新のスピードが速まる中で、既存のスキルだけでは業務を遂行することが難しくなってきているためです。このような背景を受け、企業活力研究所では2022年度から2023年度にかけて、従業員の学び直しに関する調査を行いました。
調査概要
従業員数300名以上の大企業において、学び直しを促進するための施策が実施されている企業の従業員を対象にした調査の結果、平均的な学習時間は週あたりおよそ3.6時間であることが分かりました。しかし、この数値は多くの従業員が学習時間が少ない状況を反映しており、約40%が週1時間以下の学習を行っているという結果も見られました。
一方で、週5時間や週10時間の学習を行う層も存在するなど、学習時間における偏りも顕著です。また、特に多くの時間を学びに充てる従業員は、義務的な学びと自律的な学びを含め、全体の学習時間の約60%を自律的な学びに費やしていることが分かりました。この点は、企業が従業員に対して義務的な学びを課すことで、従業員自身の学びに対する意欲を増す可能性を示唆しています。
二次調査の結果
2025年度には、一次調査の結果を基にさらに詳細な調査を行い、「学習者」と定義された月に6時間以上の個人学習を実施している従業員に対する調査を行いました。この調査によると、学習者の中でも転職を検討している層が高い比率で存在しており、学び直しに対するモチベーションの一因となっていることが明らかとなりました。
また、学習内容の面では、業務スキル向上に注力していることが確認されました。ですが、デジタル技術の学習に時間をかけていない従業員も多く、特にデジタル化の進展が著しい現在では、この点が逆に職務履行においての課題となる恐れがあります。
学習環境の整備
調査結果では、学習している環境が整っている従業員の学習時間が長い傾向がありました。特に、周囲に学習している仲間や、その上司が学んでいる場合には、本人の学習時間が増える傾向が強く、こうした環境の整備が企業の学習促進に役立つことが示唆されました。
さらに、企業の制度においては、若年層ではキャリアカウンセリング制度が効果的であり、40代層では週休3日制度が学習促進に寄与するとの指摘も受けています。これらから、各年齢層に適切な対策を講じることが、学習環境を整える上で重要であることが分かります。
結論
この調査を通じて、企業における学び直しの重要性と現状を詳探求することができました。今後、より多くの企業において学習の環境整備が進むことを期待してやみません。学び続けることが、より強い企業文化づくりに繋がると確信しています。