粘土鉱物と電解質
2025-06-03 11:52:16

粘土鉱物から生まれた革新的プロトン伝導性固体電解質の開発について

粘土鉱物を利用したナノシートの開発



熊本大学産業ナノマテリアル研究所に所属する畠山一翔助教と伊田進太郎教授を中心とした研究グループが、画期的な固体電解質を開発した。この新しい電解質は天然の粘土鉱物から抽出されたナノシートを用いており、非常に柔軟で成形性に優れた特性を持ち合わせている。

研究の背景



今現在、燃料電池は主に高分子固体電解質を使用しており、これらのシステムは高温(約800℃以上)で動作します。しかし、次世代の燃料電池では、より低温で効率的に機能することが求められており、特に100℃以上で作動することが重要視されています。従来の高分子電解質は水素の漏れ出し(水素クロスオーバー)を引き起こし、その効率を下げる要因となっていました。さらに、環境への影響も懸念されています。

新たな固体電解質の特性



今回の研究では、天然の粘土鉱物から抽出したナノシートを積層することで、プロトン伝導性の高い固体電解質を実現しました。得られた積層膜は、相対湿度100%の条件下において、10℃で3×10^-3 S/cm、100℃で6.2×10^-3 S/cm、140℃で8.7×10^-3 S/cmというプロトン伝導性を示しました。これは、従来の高分子固体電解質よりも高い水素バリア性を兼ね備えており、ガス分離性と化学的安定性を同時に実現しています。

燃料電池としての実用性



この新しい固体電解質を用いた燃料電池は、90℃で最大260 mW/cm²の出力を達成しており、-10℃から140℃の間で幅広い温度範囲で作動することが確認されています。これは非常に注目すべき成果であり、家庭用電源としての実用化も視野に入っています。

環境への配慮



開発された固体電解質は、天然素材を使用することにより環境負荷が少なく、コスト面においても優れた選択肢となる可能性があります。これにより、持続可能な社会を実現するための貢献が期待されています。

今後の展望



今後、この技術が広がることで、より効率的で環境に優しい燃料電池の実用化が進むことが期待されています。さらなる研究が進む中、ナノシートを用いた固体電解質が新たなエネルギー革命を牽引する日も近いかもしれません。2025年には『Journal of Materials Chemistry A』に研究成果が掲載され、多くの関心を集めています。これからの技術革新に目が離せません。


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