高齢者向け住宅の入居が健康と幸福感に与える影響
千葉大学予防医学センターの研究グループは、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の入居が高齢者の健康感や幸福感に及ぼす影響について調査を行いました。この研究は、同じような背景要因を持つ地域在住高齢者とサ高住の入居者を比較することで、高齢者の身体的健康や幸福感に関する新たな知見を得ることを目的としています。
研究背景
日本は急激な高齢化社会を迎えており、高齢者が安心して暮らせる住まいのニーズが高まっています。サ高住は、法律の改正を受けて供給が始まり、年々数が増加しています。これらの住宅はバリアフリーで、安否確認や生活相談などのサービスを提供し、高齢者が自立した生活を送ることを支援しています。本研究以前には、サ高住の入居者の健康状態や社会参加について調査されたものの、各々の健康感や幸福感に影響を与える要因の比較は行われていなかったため、特に注目されています。
研究の方法
本研究では、傾向スコアマッチング手法を用いて、サ高住の入居者と地域在住高齢者を1:7の割合で選出し、合計で7,640人のデータを分析しました。調査項目には性別、年齢、教育歴、生活動作、所得、資産、就労状況、独居状態、体重指数(BMI)、治療中の疾患の有無、主観的健康状態、要介護度などの12項目が含まれています。
研究成果
調査の結果、サ高住の入居者は以下の点で地域在住高齢者に比べて優れた結果が見られました。
1.
幸福感や生活満足度: サ高住の入居者は幸福感や生活満足度が高い傾向がありました。
2.
身体的健康: 身体的健康状態が良好であることが確認されました。
3.
積極的な社会参加: サ高住の入居者は外出や体操教室、友人との交流、共食に参加する頻度が高く、社会的なつながりが強いことが示されています。
4.
情緒的サポート: 入居者はよく笑い、心のサポートを受ける環境が整っていることも判明しました。
この研究の結果は、サ高住に入居することが高齢者の身体的健康状態や幸福感を改善する可能性があることを示しています。
今後の展望
本研究は高齢者向け住宅が健康感や幸福感に及ぼす影響について重要な知見を提供しました。超高齢社会において、高齢者の健康感と幸福感の維持・向上を目指した新しい住宅モデルの開発や政策立案に役立つことが期待されます。しかし、因果関係の解釈には注意が必要であり、今後は継続的な追跡調査が求められます。
参考文献
- - Health and well-being comparison between residents of serviced housing for older people and community-dwelling older adults in Japan: a propensity score matching analysis
- - 日本老年学的評価研究(JAGES)データによる調査
この研究は千葉大学予防医学センターと、積水ハウス不動産シャーメゾンPM東京株式会社との共同研究に基づいています。高齢者の社会参加や幸福感に寄与する要因を探ることで、より良いライフスタイルの提案が実現されることを期待しています。