疾患関連糖鎖の研究を加速する新たな糖ペプチド調製法
岐阜大学糖鎖生命コア研究所の中嶋和紀准教授や半澤健研究員を含む研究グループは、大阪国際がんセンターとの共同研究を通じて、糖ペプチドの調製法を革新しました。この新技術は、疾患関連糖鎖を網羅的に解析する上での強力な基盤を形成します。
画期的なアプローチ
本研究の核心は、プロテオミクスの前処理法であるSP3法を基にした、一気通貫型の糖ペプチド調製法です。市販のセルロース磁性粒子を利用することにより、糖ペプチドの純度が向上し、血液や組織試料から高純度な糖ペプチドを効率良く回収することが可能になりました。これにより、疾患に関連する糖鎖を用いた「疾患関連糖鎖カタログ」の構築が期待されています。
研究の背景と意義
糖鎖は、グルコースなどの単糖が複雑に結合して形成され、がんや神経変性疾患などの多くの病気で異常が見られます。このため、糖鎖の変化は疾患バイオマーカーの指標となり得ます。現在、文部科学省が推進するヒューマングライコームプロジェクトでは、糖鎖の網羅的な分析を通じて、疾患との関連を探求しています。しかし、従来の手法には多検体を効率的に扱う際の限界がありました。
SP3法とHILIC法を組み合わせた新手法
本研究では、SP3法を基盤に、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)を組み合わせた一気通貫型の調製法が考案されました。SP3法では、ペプチド断片化が1つのチューブ内で行われ、その後HILICによって糖ペプチドが効率的に精製されます。このプロセスにより、非糖鎖付加ペプチドを除去し、糖ペプチドを高純度で抽出することができます。
実験結果と成果
実際の実験では、血清試料から150種類の糖タンパク質に起因する1984個のN-型糖ペプチドが同定され、胃がん患者からのサンプルでも686種類の糖タンパク質が確認されました。特に、癌性変化に関与する糖タンパク質の変動が観察され、新たなバイオマーカー候補の検出に成功しました。
今後の展望
本技術の確立により、今後ヒューマングライコームプロジェクトにおける22万検体の糖鎖分析を支える根幹技術としての利用が見込まれます。近い将来、この技術が糖鎖の標準分析法となり、疾患関連糖鎖ペプチドの発見や診断薬の開発に大いに寄与することが期待されています。研究者たちは、この新方式が自動化に適していることに特に注目しており、より複雑なプロトコルの自動化につながることを目指しています。
まとめ
糖鎖は多くの疾患に関連しており、その研究はバイオマーカーの発見において重要な役割を果たします。岐阜大学と大阪国際がんセンターの共同研究により確立されたこの新たな糖ペプチド調製法は、糖鎖研究の進展を加速させる大きな一歩となるでしょう。