オオバコの種子、ダンゴムシの糞を感知して食害を回避する秘密
最近の研究により、多年生植物のオオバコがダンゴムシの糞を通じて食害を回避する驚くべきメカニズムを発見しました。この研究は、京都大学を中心とした複数の大学や研究機関のチームによって行われ、オオバコの種子がダンゴムシの糞に含まれる化学物質を感知することによって発芽のタイミングを調整する様子が明らかになりました。
この研究結果では、特に糞中に存在する「トレハロース」と「アブシジン酸(ABA)」という物質が発芽を一時的に抑制することが示されました。そして、これらの成分が水に洗い流されると、再び発芽が促されるという二段階のシステムが確認されています。興味深いことに、実際の野外調査では、ダンゴムシの糞が存在する環境では、特に雨天時にオオバコの種子の発芽が集中して行われ、食害を防ぐ仕組みが確認されました。
この発見は、オオバコがダンゴムシのような植食者の活動が活発な晴れの日には発芽を抑え、逆に活動が低下する雨の日に発芽を促すことで、食害からの免れを図っていることを示唆しています。
植物の種子はこれまで、一般に光や温度といった環境要因に応じて発芽のタイミングを調整することが知られていましたが、今回の結果は、種子が植食者からの刺激にも敏感に反応する能力があることを初めて示しています。この現象は、オオバコだけでなく、他の植物にも広がる可能性が考えられ、今後の研究の深化が期待されます。
この研究を通じて、植物の種子が糞中の化学物質を情報源として発芽を管理する新たな生態的相互作用が発見されました。自然界には多様な動物の糞が豊富に存在しており、この発芽制御の仕組みが他の植物に見られるかどうか、大きな関心を寄せられています。
一方で、対象としたダンゴムシの種類は外来種であり、オオバコとの間にどのような関係性が形成されたのかという新たな疑問も浮かび上がります。日本には在来種のダンゴムシも生息しており、オオバコが元々在来種に対して進化させた防御機構が、外来種に対しても有効に働いている可能性が示唆されています。今後の研究では、在来種と外来種のダンゴムシの相互作用の違いや、他の植物種にこの現象が普遍的に見られるかどうかを検証することで、さらなる知見が得られるでしょう。
本研究は、日本学術振興会の科学研究費補助金によるもので、成果は2025年12月9日に「New Phytologist」誌に掲載予定です。植物と動物の新たな関係性を探るこの研究は、今後の生態学や植物研究における重要なステップとなることでしょう。