2035年に向けたバッテリー市場の展望
2023年、マッキンゼー・アンド・カンパニーが発表したホワイトペーパー「バッテリー2035:新たな競争優位を確立する」によると、2035年までに世界のバッテリー市場は6.8TWhに達すると予測されています。特にリチウムイオン電池の需要が85%以上を占める見込みで、EVや再生可能エネルギー用のバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)が市場拡大に寄与するでしょう。一方で、急増する需要に対して供給過剰も見られ、価格競争が激化しています。
世界のバッテリー需要の成長
バッテリーの需要は2024年に1.0TWhを突破し、2025年には約1.6TWhに達する見込みです。その後、2030年には4.2TWh、2035年には6.8TWhに拡大すると予想されます。しかし、2025年には900GWhもの過剰生産能力が懸念されており、これが価格を押し下げる要因となるでしょう。
価格の変動と供給過剰
2025年のリチウムイオン電池パック価格は109ドル/kWhにまで低下し、2018年の半分以下となります。これはメーカーが生産能力を増やしても、全ての企業がその利益を享受できないことを意味しています。市場の競争は「生産能力」から「コストや歩留まり」へとシフトしつつあります。
競争力を決める要因
バッテリー産業においては、材料価格だけではなく、スクラップ率も重要な競争要因です。新しい生産ラインが立ち上がる初期には、スクラップ率が70%から80%にも達する場合があります。このような高いスクラップ率を抑え、95%以上の歩留まりを達成することが利益の確保につながります。
技術革新と市場の変化
製造プロセスにも革新が求められます。デジタルツインやインライン解析など新技術の導入により、コスト削減と効率化を図ることが可能です。特にドライ電極コーティングの導入は、コスト削減に寄与し、競争優位を確立するキーになるとされています。
中国に集中するバッテリー供給網
世界のバッテリー供給網は中国に集中しています。米国やEUは負極用黒鉛や正極前駆体の生産シェアが10%未満であり、この偏在が欧米の競争力強化の大きな課題となっています。バリューチェーンの戦略的な再構築が求められる中、国内生産だけでは問題は解決しません。
BESS市場の成長
再生可能エネルギーの普及とともに、BESS市場が急速に拡大していることも大きな変化です。2030年にはBESSの累積導入量が500~700GWhに達すると見込まれています。特に、データセンターの電力需要の増加はBESSの導入を促進しています。
2035年の競争優位要因
2035年に向けて競争優位を確立するためには、以下の4つの領域が重要です。
1.
コストリーダーシップ:部材構成の最適化や生産効率の向上。
2.
オペレーショナルエクセレンス:迅速な工場立ち上げと高いOEE。
3.
サプライチェーンの国内・域内化:安定した供給網の構築。
4.
信頼性の高い技術ロードマップ:迅速な市場投入。
バッテリー市場は多くの競争を抱えながらも、その成長は避けられないと考えられます。企業はその変化に適応し、新たな市場機会を見出す努力が求められます。