R&D部門が新たな事業創出に果たす役割と課題
株式会社電通と電通総研は、2025年5月に「新たな事業創出とR&Dの関係性に関する調査」を実施し、760名の企業従業員を対象にR&D部門の役割とその実態を探りました。この調査は、企業が新しい事業や製品を創出するための取り組みの現状を明らかにし、特にR&D部門がどのように貢献しているかに焦点を当てています。
調査の主な結果
調査によると、73.5%の従業員が自社の新たな事業創出や製品企画に取り組んでいると回答しましたが、実際に成果が出ていると感じたのはわずか20.2%に過ぎません。このギャップは、企業内でのR&D部門の役割に対する期待が非常に高いことを示していますが、実際の貢献度に対する満足感は低いことが明らかになりました。
R&D部門への期待と実態
企業が最も期待するR&D部門の役割は、スピード感のある研究開発(73.4%)、グローバル競争力のある技術の開発(70.2%)、事業成果を見込んだ研究開発の推進(69.9%)です。しかし、これらの期待に対する実際の貢献実感は、期待スコアと実際の貢献度の間に大きな乖離があることが確認されました。
この乖離を埋めるためには、R&D部門が新たな事業創出において中心的な役割を担うことが不可欠です。実際、調査結果によると、成果が上がっていると回答した従業員は、R&D部門の積極的な貢献を約4倍も実感しています。
企業の成功要因
調査結果から見えてきたのは、成果実感が高い企業には共通する特徴があることです。
1. 中長期での研究戦略の共有ができている。
2. 自社技術の理解が社内外で進んでいる。
3. 顧客ニーズへの深い理解がある。
4. R&D部門が新しい事業創出を主導・関与できている。
5. 外部パートナーとの連携がスムーズである。
これらは、R&D部門が単に技術を開発するだけでなく、ビジネスの成長に寄与するための重要な要素となっています。中長期的な研究戦略を持ち、社内での共有が進化することで、R&D部門の役割が強化され、企業全体の成長を後押しする力を持つのです。
調査の意義
電通と電通総研は、今回の調査を通じて、R&D部門が企業の変革においていかに重要であるかを示しました。企業が持つ技術価値を事業創出につなげる取り組み、『R&D For Growth』プログラムを通じて、さらなる成功を目指す姿勢が重要です。R&D部門は、企業全体の戦略に密接に連携し、変革のリーダーシップを発揮する役割が求められています。
結論
今後、企業が新たな事業を創出するためには、R&D部門の役割の再評価とその貢献度の向上が求められます。成果実感の向上には、研究戦略の共有、技術理解の促進、顧客ニーズへの深い理解、そして社外パートナーとの連携が欠かせません。これらの要素を強化し、企業全体でのシナジーを生むことが、持続可能な成長に繋がるでしょう。