RNAと分子シミュレーション
2025-11-04 10:51:34

分子動力学シミュレーションによるRNAステムループ折りたたみの新たな展開と創薬への可能性

RNAステムループの折りたたみダイナミクスの再現



東京理科大学の安藤格士准教授の研究チームが、RNAの基本的な要素であるステムループの折りたたみ過程を分子動力学シミュレーションにより原子レベルで再現することに成功しました。

研究の背景と重要性


生物学においてRNAは、タンパク質合成や遺伝子発現の制御など多様な役割を果たしています。そのため、RNAの構造と機能の関連性を理解し、制御することが科学界での重要な課題とされています。近年、RNAを元にした新たな治療法の開発が進められており、その基礎となるのがRNAの正確な構造予測とその動的挙動の理解なのです。

RNAの構造は異なる環境や条件で変化するため、構造解析することが非常に難しい課題です。特に、RNAの折りたたみプロセスを高精度でモデル化するためには、従来のシミュレーション手法では限界がありました。そこで、本研究では、RNAの折りたたみの基本的な要素であるステムループに焦点を当てました。

研究の成果


先進的な分子動力学シミュレーション手法を用いて、研究チームは多様なRNAステムループの折りたたみ過程をシミュレーションしました。これにより、10〜36残基のRNAステムループ23種類の構造を原子レベルで再現。特に注目すべきは、従来の研究に比べ、より多くの種類のRNAを対象に精度の高いシミュレーションデータを得られた点です。

使用したMDシミュレーション手法には、米国のD. E. Shawらが開発したRNA用の分子力場と、一般化ボルン暗黙的溶媒モデルを組み合わせ高い精度を達成しました。この技術革新により、RNAの基本構造でもあるステムループの折りたたみ過程の全体像をクリアに示すことができました。実験データとの比較で、シミュレーション結果が非常に良好な一致を見せたこともポイントです。

創薬への応用


また、これらの成果はRNA分子のデザインや創薬分野における応用が期待されます。RNAに関連する疾患の治療法開発や新薬の設計において、RNAの動的挙動を理解することは革新的なアプローチとなるでしょう。この研究が進むことで、RNAベースの療法がより効率的に進められることが期待されます。

まとめ


総じて、本研究はRNAの構造機能研究に新たな視点を提供し、分子動力学を用いたRNAのモデル化における重要な進展を示しています。今後の研究により、RNAの動態やその関連分野でのさらなる発展がなされることを期待しています。研究成果は2025年10月26日に国際学術誌『ASC Omega』に掲載されました。

RNAステムループ折り畳みシミュレーションの様子を動画で見るこちら


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