新たな省エネAI半導体技術の革新
一歩前進するエッジAI領域
近年、情報技術の進展により、私たちの生活はAIやビッグデータに支えられ、ますます便利になっています。しかし、その裏には大量の電力消費と効率の問題があります。日本の新しい技術開発において、国立大学法人東北大学と株式会社アイシンが大容量MRAMを搭載した「CMOS/スピントロニクス融合AI半導体」の開発に成功しました。これはエッジ領域用の半導体デバイスに特化しており、従来のシステムに比べてなんと10倍以上の電力効率を実現しています。
画期的な性能向上の背景
NEDOが進める「省エネAI半導体及びシステムに関する技術開発事業」は、今後のエッジ向けAI半導体の基盤として、特に注目されています。デバイスが適用されるエッジ領域は、クラウドと違って電力やサイズ、環境に対する制約が多く、この環境下で高効率なシステムの実現が重要です。これに対し、今回の半導体開発では、MRAMの特性を活かして外付けメモリを合理的に内蔵化することに成功しています。
MRAM技術の利点
MRAMは、磁化の方向を利用して情報を保持する不揮発性メモリです。これにより、従来のメモリに比べ、高速な動作と高い耐久性が実現されます。新たに開発された半導体では、MRAMを内部メモリとして配置することで、起動時や動作時の電力消費を大幅に抑え、起動時間を短縮しました。システム動作シミュレーションの結果、電力効率が10倍以上向上し、起動時間はなんと10分の1に削減されています。
実証チップの設計と今後の展望
実証チップは、台湾積体電路製造(TSMC)社の最先端のプロセス技術を使用して設計され、アプリケーションプロセッサにはArm® Cortex®-A53デュアルコアが採用されました。このチップは、特に車載システムや監視装置などへの応用を見込んでおり、今後もさらに電力効率を向上させる技術が開発される予定です。
エッジAI処理におけるこの新技術は、二酸化炭素の排出削減にも寄与することが期待されています。加えて、この成果は2024年10月15日から18日に幕張メッセで開催される「CEATEC2024」のNEDOブースで展示される予定です。これにより、多くの関係者への情報提供が行われ、さらなる技術的発展が促進されることでしょう。
総括
新たに実現されたCMOS/スピントロニクス融合技術は、エッジAI向け半導体市場において、画期的な電力効率の改善をもたらすものであり、今後の技術実用化と社会実装に向けた期待が高まります。今後の研究開発によって、さらなる進展が見込まれるこの分野に、ぜひ注目していきましょう。