論文の要約
九州大学大学院の筒井由梨子医員を中心とした研究チームは、生体肝移植患者における骨格筋電気刺激装置の効果を検証し、その成果を「Hepatology Research」に発表しました。この研究では、電気刺激が血清ミオスタチン濃度の低下とサルコペニアの改善にどのように寄与するかを調査しました。
ミオスタチンとは?
ミオスタチンは骨格筋の成長を抑制するタンパク質であり、特に肝疾患に関連するサルコペニアを発症するリスクを増加させます。生体肝移植患者では、ミオスタチンが過剰に分泌され、筋力や身体機能が低下することが問題視されています。実際、肝硬変患者の中には、サルコペニアが37.5%の有病率を占めることが報告されています。このことは、肝細胞癌の手術後の予後にも影響を及ぼします。
研究の目的と方法
本研究の目的は、生体肝移植を受ける患者の周術期において骨格筋電気刺激装置がミオスタチン濃度やサルコペニアに与える影響を検討することです。20歳以上でMELDスコアが15ポイント以上の末期肝疾患患者が対象となり、電気刺激装置は生体肝移植前から退院まで適用されました。その際、血清サンプルを手術前と前処置前に採取し、筋肉量についてはCTを用いて評価します。
電気刺激の介入方法
介入群では、電気刺激装置を両脚の大腿部に毎日2回、各20分間適用しました。CT画像解析によって大腿四頭筋の面積および大腰筋指数を算出し、介入前と生体肝移植後の変化を比較しました。
研究結果
研究によると、介入群は血清ミオスタチン濃度が有意に改善されたことが示されました。対照群では、生体肝移植1ヶ月後の大腰筋指数が介入前に比べ低下したのに対し、介入群ではその値が維持されました。また、大腿四頭筋の面積も介入群では維持され、コントロール群と比較して良好な結果が得られました。
結論
電気刺激装置を利用することで、血清ミオスタチン濃度の低下が確認され、さらには骨格筋量が保持されることが判明しました。この結果は、生体肝移植患者にとって筋力を維持し、サルコペニアの改善に寄与する可能性を示唆しています。
この研究の詳細は、論文「Impact of electrical muscle stimulation on serum myostatin level and maintenance of skeletal muscle mass in patients undergoing living‐donor liver transplantation」(Hepatol Res.2024;1–11)から確認できます。さらに、株式会社MTGは、今回の研究を通じて、大学との連携や共同研究によって新たな技術の開発を進め、健康的な生活を支える商品やサービスの提供を目指しています。