再発・難治性多発性骨髄腫向け新薬「タービー®」の製造販売承認
2023年10月24日、Johnson & Johnson(以下、J&J)は、再発または難治性の多発性骨髄腫に対する新薬「タービー®」の製造販売承認を取得したことを発表しました。この薬は、投与前の調製が不要である点が特徴的で、GPRC5DおよびCD3を標的とする二重特異性抗体として、世界で初めて承認されました。
タービー®の特徴と効能
タービー®(一般名:トアルクエタマブ)は、T細胞表面に発現するCD3受容体と、多発性骨髄腫細胞の表面に高発現するGPRC5Dに結合します。この二重特異性抗体により、特に治療選択肢の少ない再発または難治性の多発性骨髄腫患者に対して新たな治療の道を開くことが期待されています。タービー®は、初回導入後は週1回または隔週に皮下投与が行われます。
臨床試験の結果
今回の承認は、国際共同で行われた第I/II相MonumenTAL-1試験や日本国内で実施された第I相MMY1003試験の結果に基づいています。これらの試験では、成人の再発または難治性の多発性骨髄腫患者を対象にタービー®の有効性と安全性が評価されました。
MonumenTAL-1試験では、タービー®を投与された患者の70%以上が有効な治療反応を示しました。特に、深く持続的な奏効が見られ、良好な安全性プロファイルも確認されました。この試験によれば、再発かつ難治性の多発性骨髄腫患者においては、タービー®が深い持続的な奏効を実現する可能性があるとされています。
医療現場での意義
多発性骨髄腫は、依然として治癒が難しい血液がんです。繰り返し再発することで、症状はますます悪化し、治療の奏効も低下するリスクがあります。そんな中で、タービー®の登場はこの病気に対する新たな希望をもたらします。
岩手医科大学の伊藤教授も「タービー®の臨床試験は、再発または難治性の患者にとって、臨床的に意義のある有効性と安全性を示した」とし、この新薬の登場に期待を寄せています。再発や難治性の多発性骨髄腫患者にとって、新たな選択肢が増えることで、患者の予後が改善されることが願われます。
J&Jの方針とインパクト
J&Jは、タービー®が多発性骨髄腫患者に向けた新しい治療薬となることで、治療ニーズに応える姿勢を強調しています。代表取締役社長のクリス・リーガー氏は、「タービー®の承認は、未解決のニーズに対処し、患者に新たな希望を提供することを意味しています」と述べています。
また、GPRC5Dという新たな抗原に基づく研究開発が進むことで、今後も新しい治療薬の上市が期待されます。
まとめ
「タービー®」の承認は、再発または難治性の多発性骨髄腫患者にとって新たな治療選択肢と希望を提供します。今後の治療の進展に注目が集まる中、患者の生活の質の向上が期待されています。J&Jは引き続き、革新的な医薬品の開発に力を入れていく方針です。
参照情報
- - MonumenTAL-1試験に関する詳細
- - 国内外の多発性骨髄腫の最新セミナー情報
- - J&Jが今後の展開について語るウェビナー情報