環境問題の新たな視点を提示
温暖化や脱炭素化についての議論が盛んに行われている現代。しかし、これまでの話が本当に正しいのか、多くの人が疑問に思うことでしょう。池田信夫氏の新刊『脱炭素化は地球を救うか』がその疑問に正面から向き合っています。
この本は、温暖化や脱炭素化に関する事実を客観的に再考し、時にはその常識を覆すような視点を提供します。著者の池田氏は、冷静で理性的な立場から、温暖化が「悪」とされる理由を質問し、実際のメリットやデメリットについても検討しています。
温暖化に対する新たなアプローチ
温暖化が進行していることは否めませんが、著者はその進行が本当に悪いのかを問いかけます。実際、温暖化によって死亡率が下がり、寒冷地での農業生産が増加する一方で、水位上昇や異常気象などのデメリットも考慮する必要があります。これらのメリットとデメリットを天秤にかけると、単純に「悪い」とは言えないかもしれません。
また、温暖化の原因を人間活動だけに帰するのではなく、地球が自然に繰り返してきた温暖期や寒冷期の影響も考慮すべきだと言います。人間の活動が及ぼす影響は限られている可能性があるという視点から、果たして我々が温暖化を止めることができるのかとも問いかけています。
適応策が鍵
池田氏は、「脱炭素化」自体を否定しているわけではありませんが、その進め方に問題があると指摘しています。たとえば、急激な脱炭素化による日本のエネルギー基本計画は、現実には実現可能性が低いとされています。また、太陽光パネルの導入が実は環境に悪影響を及ぼす場合も多いことを伝えています。
最も重要なのは、温暖化に対してどういう「適応策」を採るべきかということだと著者は述べています。イデオロギーではなく、科学的根拠に基づいた検討が求められています。例えば、感染症や食糧危機など、緊急性を要する問題への関心を高めるべきだと警告します。
知識の整理
『脱炭素化は地球を救うか』は176ページとコンパクトで、図表も豊富なため、読者にとって手に取りやすくなっています。池田氏の独特な視点から温暖化や脱炭素化について考察することで、これまでの常識を見直す良い機会となります。
著者の池田信夫氏は経済学者であり、論理的かつ鋭い考察で知られています。本書を通じて、温暖化問題に対する新たな視点を得ることができるでしょう。今までの議論を一歩踏み込み、実際の問題解決に向けた議論を推進していくことが求められています。私たち一人ひとりがどのように環境と向き合うべきなのか、考えるきっかけとなる一冊です。