京都大学と京セラが共同開発した熱エネルギー活用技術
最近、京都大学と京セラ株式会社が共同で、セラミックデバイスを使って熱エネルギーをAI計算資源として効果的に利用する技術を開発し、その実証に成功しました。この技術は「サーマルリザバーコンピューティング」(TRC)と呼ばれ、熱の拡散を時系列データとして活用する新しいアプローチを採用しています。
研究の背景
熱は私たちの生活の中で多く使われているエネルギーです。しかし、日本のように資源が限られた国では、熱エネルギーをいかに効率よく利用するかが大きな課題となっています。特に、近年では生成AIの普及によってデータセンターの電力消費が急激に増加しており、これは社会的な問題となっています。
京都大学と京セラの研究チームは、廃棄されていた排熱をAIの計算資源に変換するという革新的な視点から新技術を開発。その結果、AIの推論や学習を支えるための熱エネルギーの有効活用を目指しています。TRC技術を活用することで、無駄になっていた熱エネルギーを情報処理に役立つ資源とすることができます。
TRC技術の具体的な利点
このTRC技術を用いることで、現場で様々な物の状態を素早く特定できる可能性が広がります。また、データ量を1/10から1/100に削減できれば、通信に必要な電力やデータ転送のスピードも大幅に向上します。これは、さまざまなデバイスの効率性と性能を向上させる大きなステップとなるでしょう。
共同開発の成果と今後の展望
本技術開発では、京都大学が熱伝導シミュレーションとリザバーコンピューティングの性能評価を担当し、京セラは高精度セラミックデバイスの開発を行いました。実証実験の結果、TRCが効果的に機能することが確認されています。両者は今後、さらなる研究と性能向上を図り、産業応用を模索していく予定です。
TRCを利用したエッジAI技術は、熱の減少だけでなく、熱そのもので計算を行う新たな仕組みです。これにより、企業が直面する排熱の無駄やAI計算のエネルギーロスという二つの課題を同時に解決する可能性があります。
この技術の応用は、電子機器や自動車、情報通信、さらには宇宙航空など多様な分野に広がることが期待されています。京都大学と京セラは、さらに実証実験を進めながら、実用化に向けての研究開発を加速していく方針です。
本研究の成果の一部は、2025年12月17日から19日までの間、東京ビッグサイトで開催されるSEMICON Japan 2025のアカデミアエリアにて展示される予定です。