日本のグローバル・バリュー・チェーン分析:60年間の変遷と国際情勢への影響
日本のグローバル・バリュー・チェーン分析:60年間の変遷
はじめに
日本の経済と企業は、グローバルな環境における数々の変化に直面しています。米中貿易摩擦やロシアのウクライナ侵攻といった国際的な事象が流通に影響を与え、グローバル・バリュー・チェーン(GVC)の構造を揺るがしています。特に、東アジアにおけるGVCの動向は日本にとって極めて重要であり、過去60年間にわたるこれらの変化を分析することは、新たなビジネスチャンスの発見に繋がります。
研究の目的
本稿の目的は、国際産業連関表を用いて、日本を中心とした東アジアのグローバル・バリュー・チェーンの変化を分析することです。分析には、GVCを定量的に表現する手法として「上流度」と「下流度」を用いて、各国と各産業におけるGVCの「長さ」と「位置」を明らかにします。
60年間のGVCの変化
GVCの長さ
分析の結果、GVCの「長さ」は特に2000年代に顕著に伸び、その後2010年代に入ると停滞が見られました。この変化は、世界貿易の動向と密接に関連しており、2000年代の急成長と対照的に、2010年代に入ってからの成長鈍化(いわゆる「スロー・トレード」)が影響しています。GVCの深化は、貿易量の増加と歩調を合わせて進行していたことが確認されました。
GVC上の立ち位置
次に、GVCの「立ち位置」についてですが、2010年代においても変化が見えました。韓国や台湾のIT産業は、上流へのシフトとともに付加価値比率も向上し、競争力の改善が確認されました。これは、かつて日本が担っていた製造工程に進出した結果と考えられます。一方、日本のIT産業は80年代から90年代にかけての競争力の変化が見られず、立ち位置の変化も乏しいままとなっています。
結論
これらの分析を通じて、GVCの深化と各国・各産業の競争力の変化についての理解が進むことが期待されます。日本を含む東アジアは、複雑化する世界経済の中でどう適応していくのかが、今後の課題です。本稿は、日本のグローバル企業が今後直面する可能性のある経済環境の変化を考える上での重要なひとつの指針になるでしょう。
参考文献
1. 日本銀行ワーキングペーパーシリーズ
2. 国際産業連関表
この研究は、多くの専門家に支えられたものであり、今後も継続してGVCに関するデータを収集し、分析を進める必要があります。