Seeds-Hubフォーラム開催報告:研究シーズの社会実装加速化に向けた産官学連携の取り組み
2024年7月9日、京都大学「医学領域」産学連携推進機構(KUMBL)、株式会社AGRI SMILE、株式会社Convallariaが組成するSeeds-Hub協議会主催のSeeds-Hubフォーラムが開催されました。
フォーラムには、全国の研究者、企業、投資家、行政機関から多数の参加者が集まり、「研究の社会実装を加速するために、アカデミアからの研究シーズをより多く顕在化させる方法とは?」をテーマに活発な議論が交わされました。
産官学連携の課題と解決策:3つのアクション
議論を通して、産官学の間にあるずれが研究シーズの顕在化を阻害しているという共通認識が生まれました。そのずれをポジティブに捉え、具体的な課題を洗い出し、参加者全員で議論した結果、Seeds-Hubが取るべきアクションとして以下の3点が提案されました。
1.
産学が互いに理解しあうための場の醸成: 対面でのフォーラムは、産官学の相互理解を深める上で非常に効果的であることが確認されました。企業にはサイエンスの面白さを、研究者には企業からのニーズ発信の機会を提供することで、互いに寄り添う関係を築けることが示されました。Seeds-Hubは、それぞれの関係を仲介する役割を果たせる仕組みであり、さらなる進化が期待されています。
2.
研究者のモチベーションを上げるための学学連携の促進: 産学連携を研究者に無理強いするのではなく、産学連携や事業化が当たり前のマインドが自然に浸透するような土壌作りが重要であるとの意見が多数寄せられました。Seeds-Hubは、特許出願に躊躇するような研究者に対して、企業との共同研究や起業の経験を持つ研究者や、産学連携や起業を支援する人材を繋ぐことで、研究者のモチベーション向上に貢献できます。
3.
『本気の産学連携』の実施: システム上に研究提案を掲載するだけでは産学連携は進みません。セミナーでの発信や受信だけでは不十分です。本気の産学連携には、受け身ではなく、能動的な活動が不可欠です。人的支援、経済的支援、そして産学連携に対して正当な評価が得られるような制度作りが重要となります。さらに、アカデミアの各機関で活動する産学連携担当者の連携強化、ネットワーク構築、経験共有なども重要です。
研究ピッチ、企業ピッチ:具体的な取り組み
フォーラムでは、研究者による研究シーズの紹介、企業による協業ニーズや研究支援の仕組みの紹介が行われました。
李 聖林 京都大学 高等研究院 / 医学研究科 教授: 皮疹の形状から生体内を予測する皮膚疾患の診断システムの開発
池田 幸樹 京都大学 高等研究院 物質-細胞統合システム拠点 特定拠点助教: 弱い相互作用を定量・可視化する”Hakoniwa(箱庭)”テクノロジー
久保 允人 東京理科大学 研究推進機構 総合研究院 嘱託教授、国立研究開発法人 理化学研究所 生命医科学研究センター サイトカイン制御研究チーム チームリーダー: ミトコンドリアを活性化してがんワクチンブースターに繋げる
升村 誠 新潟大学社会連携推進機構 産学イノベーション推進部門 ライフイノベーション推進室 クリエイティブマネージャー/特任教授: 新潟大学における産官学連携の課題
武田薬品工業株式会社 センタフォーエクスターナルイノベーション日本/APAC: 武田薬品センターフォーエクスターナルイノベーション日本/APACの紹介とシーズ探索について
公益財団法人川崎市産業振興財団 iCONM in collaboration with BioLabs サイトディレクター: 川崎市殿町におけるエコシステム構築の取り組み
Seeds-Hub協議会:産学連携の促進を目指して
Seeds-Hub協議会は、研究シーズの社会実装に向けた大学および企業のコラボレーション創成を促すことを目的に設立されました。
運営会員: 京都大学「医学領域」産学連携推進機構、株式会社AGRI SMILE、株式会社Convallaria
協力機関: 京都大学メディカルイノベーション大学院プログラム、iCONM in collaboration with BioLabs
まとめ:産官学連携の未来へ
Seeds-Hubフォーラムは、産官学連携における課題と解決策を共有し、未来に向けて具体的な行動を起こすための重要な一歩となりました。今後、Seeds-Hub協議会は、産官学三つ巴で変革のための活動を精力的に進めていく予定です。