2025年Q3 リテール市況レポートの概要
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)は、2025年第3四半期のリテール市況に関するレポートを発表しました。本記事では、その内容を詳細にお伝えします。
経済動向
2025年第3四半期における日本の実質GDPは減少が見込まれ、前期比で年率-3.9%という厳しい予測がされています。これは、特に米国の輸出関税の影響を受けた駆け込み輸出の反動によるものです。ただし、消費者のマインドには改善の兆しが見られ、コアCPIは前年同期比で+2.9%と鈍化し、インフレもある程度落ち着いてきました。
勤労世帯の実収入は0.1%減少しているものの、賃上げが進んでいることから、前年の減少幅よりも小さくなっています。また、消費者態度指数は緩やかに改善しつつあります。
小売業界においては、生活必需品が引き続き好調を維持しています。特にドラッグストアの売上は4.7%増加し、百貨店は1.4%減少という対照的なデータが示されています。円高や高額品の値上げによって免税売上は減少傾向にありますが、円安に転じたことでその減少幅は縮小しています。高額品に関しては、時計や宝飾品の売上が堅調に推移し、全体としては前年の減少幅を下回る結果となっています。
賃料の動き
C&Wのレポートによると、第3四半期の主要プライムエリアにおいては賃料が上昇しています。渋谷では20%の上昇、心斎橋・御堂筋で14.3%、表参道・青山・原宿で12.5%、そして銀座で10%の増加が確認されました。
しかし、大手海外ラグジュアリーブランドの需要は依然として低迷している一方で、アスレジャー系のブランドが高額賃料を受け入れる事例も見られます。これにより、タイトな需給環境が賃料の上昇を助長しています。特に銀座ではプライムエリアで高額賃料での成約が増加しており、プライムエリア自体の広がりも期待されています。
今後の見通し
足元のドル円相場は4%ほど円安に振れているものの、今後は欧米の中央銀行の利下げにより、円高に転じる可能性があります。このため、免税売上の増加は限定的と見られます。しかし、国内株式市場は好調で、資産価格の上昇が消費者マインドを改善させています。
プライムエリアの賃料は、未竣工物件の賃料が既存店舗の上限を超える事例が増えそうで、今後1年間賃料の上昇は続く見込みです。また、名古屋の栄などでは再開発プロジェクトが進行中で、これによりプライムエリアが拡大する期待感も高まっています。
総括
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドの2025年第3四半期のリテール市況レポートは、経済の側面から消費者心理、賃料動向、今後の見通しまで幅広くカバーされています。今後の国内経済やリテール市場の動向を注視することが重要です。