データセンター投資の新たな視点
三菱UFJ信託銀行が発行した不動産マーケットリサーチレポートVol.258は、データセンター(DC)投資に焦点を当て、特にその運営や出口戦略に関するリスクを詳細に明らかにしています。本レポートは、前編と後編に分かれた構成で、投資家にとって重要な知見を提供しています。
レポートの概要
このレポートでは、データセンターの賃貸運営における特性やリスク要因をテナントの視点と建物・設備の観点から深掘りしています。特に、長期にわたる安定した収入が期待される一方で、テナントの入れ替えが少なく代替性が低い点は、投資リスクとして意識すべきポイントです。また、設備の陳腐化の早さや、減価償却・キャピタル支出の負担が大きいことも見逃せません。
賃貸運営の形態
データセンターへの投資は大きく分けて「躯体型」と「設備型」に分類されます。
- - 躯体型: 基本的に土地や建物、建物附属設備にのみ焦点を当てる形態です。DC事業者と賃貸借契約を結び、一般的な不動産賃貸と同様の収支構造となります。賃料相場は近隣の倉庫程度からオフィス未満の水準で形成される傾向があります。
- - 設備型: DC特有の設備も含めた形態で、主な収入源は賃料と設備利用料です。こちらも通常は長期契約が主流です。
このように、投資対象の違いによって収支の構造が異なり、それぞれの特性を踏まえた戦略が求められます。
DCの老朽化と出口戦略
データセンターの老朽化が進行した場合、特にテナント退去が発生することで譲渡が行われることが多く、築年数の経過によるスペックの低下が問題視されます。市場ニーズと合わなくなった場合、他用途への転換が難しくなるため、譲渡先としてデベロッパーや不動産会社が選ばれることが一般的です。これに伴い、既存設備を更新し続けて運営されるケースも存在しますが、やはり注目すべきはDCとしてのスペックが賃料に与える影響です。
投資にあたっての考慮点
データセンターへの投資は、一般的な不動産投資とは異なる知識とノウハウが必要です。特に電気や空調設備など、DC事業の競争力に直接影響を与える要因を保有し続けることが、長期的に見て重要です。テナントの退去リスクに対しても慎重である必要があり、契約条件を吟味することは賢明な選択と言えるでしょう。
まとめ
データセンター投資はリスクとリターンのバランスを適切に考慮した上で、戦略を立てる必要があります。三菱UFJ信託銀行のレポートは、投資家にとって画期的な情報源となり、投資活動に役立つ知見を提供しています。