糖鎖の自己制御メカニズムを発見!糖尿病研究の新たな展望
岐阜大学の木塚康彦教授と研究チームが、糖鎖がその生合成を自己調節するという新たなメカニズムを発見しました。この研究は、他の大学や研究機関との共同作業で進められ、糖鎖の枝分かれ構造を制御する酵素に焦点を当てたものです。特に、GnT-IVaおよびGnT-IVbの機能が、糖鎖自身によって抑制される仕組みが明らかになりました。
本研究の発見によれば、GnT-IVaとIVbという酵素は、それぞれユニークな構造を持つレクチンドメインを通じて、糖鎖を持つ基質タンパク質を認識します。さらに、彼ら自身にも糖鎖が付いており、その糖鎖がレクチンドメインに結合することで、自らの活性を制御します。このように、特定の糖鎖は同じ糖鎖の合成を抑制する自己制御機構が存在することが示されたのです。
研究の背景
糖鎖とは、動物の体内で重要な役割を果たす構造物であり、様々な疾患に関与しています。特に、がんやアルツハイマー型認知症といった病気の発症において、糖鎖の構造の変化が報告されています。これまで、糖鎖の合成を促進する糖転移酵素の働きはよく知られていましたが、それをどのように調整するのかは不明でした。この未解明な領域を探求するため、木塚教授の研究ではGnT-IVaとIVbに注目しました。
研究成果
研究チームは、GnT-IVaとIVbが持つレクチンドメインの役割を解明するため、特定のアミノ酸を変異させた酵素の活性を調査しました。これにより、糖タンパク質に対する酵素活性が減少することが確認され、レクチンドメインの存在が酵素の機能に不可欠であると示されました。さらに、GnT-IVaとIVbが自己の糖鎖との結合を通じてその機能を抑制できることが明らかとなり、糖鎖が生合成を制御する存在であることが示されたのです。
この結果は、糖鎖の形成過程を新たな視点から明らかにするものであり、さまざまな疾患の理解を深める手助けとなります。特に、糖尿病の病態解明や治療薬の開発に寄与することが期待されています。
今後の展望
本研究の成果を通じて、これまで謎だった糖鎖の自己制御メカニズムが解き明かされました。今後、さらなる研究が進められることで、糖鎖の生合成過程の解明や、糖尿病との関連を探る新たな治療法が開発されていくことが期待されています。この成果は、2024年9月27日付で『iScience』に掲載され、科学界でも大きな注目を集めています。
本研究は、文部科学省の支援を受ける「ヒューマングライコームプロジェクト」によって進められました。今後の研究が、糖鎖を標的とした医療の発展に繋がることを期待したいと思います。