福島第一原子力発電所では、放射性物質を取り除いた処理水や建屋内の水、地下水、周辺海水の試料を採取し、化学分析が行われています。震災前に比べ、処理水の分析件数は年間約8万件と急増しており、データは発電所の状態を示す重要な指標となっています。社会的関心も高く、分析結果は毎日HPで公開されています。
これまで、約140人の東京パワーテクノロジーの分析員がこの作業を担当してきましたが、従来の手作業に依存しなければならない部分が多く、効率化が求められていました。
そのため、システム化の取り組みが始まったのは4年前。目を向けたのがスマートグラスでしたが、市販の製品では分析に必要な機能が不足していました。そこで、「無ければ自分たちで作る」という決断に至り、自社開発を行いました。
開発したスマートグラスは、QRコードを読み取るカメラ、映像送信機能、マイク、ヘッドホンなどを装備し、さらにグラスの動作をアシストする装置も追加しました。こうして完成したスマートグラスは、データ管理システムの一部として機能します。試料に貼られたQRコードを分析室で読み取ることで、記載された採取日時を音声でシステムに入力し、データ評価室との連携チェックが可能になります。
この技術導入による効果は絶大で、年間約80万枚のチェックシート作成が不要となり、データ処理にかかる時間は大幅に短縮されました。一例として、1日分の試料処理時間が延べ57時間から19時間にまで減少し、結果として分析員の人数も140人から110人に削減されました。これにより、高度な分析技術を習得するための人材を確保する余裕も生まれています。
現在、福島第一原発の廃炉に向けた取り組みの中で、新たな技術が次々と生まれています。スマートグラスの開発もその一環であり、今後他の分野への応用も期待される汎用性の高い技術です。早期の廃炉実現に向けた革新的な作品が、今後どのように活用されていくのか、その行方に注目です。
この取り組みは東京電力グループのWeb広報誌『東京電力報』でも紹介されています。詳細については、ぜひ訪れてみてください。
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