関西医科大学、光免疫療法の新規標的分子を発見
関西医科大学の研究チームが、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する光免疫療法の新たな標的分子であるICAM-1を確認した。これは、がん治療における革新的な進展となり、今後の臨床応用への道筋が期待される。
研究概要
本研究では、2種類のトリプルネガティブ乳がん細胞株であるMDAMB468-lucとMDAMB231をマウスに移植し、光免疫療法の有効性を検証した。近赤外線光を照射した所、細胞は容量依存的に損傷を受けることが確認された。また、ICAM-1をターゲットにした光照射も行い、細胞質内での変化が観察された。特に、治療後2時間以内にアクチン細胞骨格の異常が見つかり、がん細胞の増殖が抑制されたことを示す結果となった。
本研究の意義
今回の研究成果は、ICAM-1を用いた光免疫療法が、トリプルネガティブ乳がんの治療において新たな選択肢となる可能性を示唆している。実際、近赤外線光を使用した治療によって、マウスにおける腫瘍の拡大が抑制され、生存率が改善された。
光免疫療法の背景
がん治療は、一般に手術療法、化学療法、放射線療法、免疫療法という4つの主要なアプローチがある。しかし、これらの方法では正常細胞も攻撃されるリスクが伴い、副作用も多い。光免疫療法は、この問題を解決するための新しいアプローチで、がん細胞に選択的に作用し、正常細胞にはほとんど影響を与えないという特長を持つ。具体的には、がん細胞に結合する薬剤を近赤外線光で照射することで、薬剤が化学変化を起こし、がん細胞を物理的に破壊する仕組みだ。
日本では、光免疫療法は2020年9月に「切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部癌」に対して承認され、保険診療で使用が可能な状態にある。光免疫療法の薬剤は、がん細胞に多く存在する特定の抗原に結合する抗体に近赤外線に反応する物質をco付けたもので、点滴後短期間でがんに集まり、レーザー光を照射することで効果を発揮する。
今回の研究で確認されたICAM-1は、トリプルネガティブ乳がんのバイオマーカーであり、生物学的に機能しなくても治療のターゲットとなり得る。これにより、急速に増殖・転移するトリプルネガティブ乳がんに対する新たな治療法の開発が期待される。
研究論文の発表
今回の研究結果は、2022年6月20日に「Cancer Science」という権威ある学術誌に掲載された。論文タイトルは「Intercellular adhesion molecule-1 (ICAM-1)-targeted near-infrared photoimmunotherapy in the treatment of triple-negative breast cancer」である。
お問い合わせ
関西医科大学 光免疫医学研究所では、さらなる研究と臨床応用に向けた取り組みを進めている。詳しい情報や取材については、以下の連絡先まで問い合わせが可能。