2024年Q3リテール市況レポートの概要
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)は、2024年第3四半期のリテール市況に関する詳細なレポートを発表しました。このレポートには、経済状況や市場動向、消費行動の変化などが幅広く分析されています。
経済の状況
2024年第3四半期の実質GDPは民間消費の伸びを背景に、年率+0.9%の成長を実現しました。特にボーナスの増額や定額減税が消費を後押ししています。一方で、コアCPIの前年比成長率は2.4%にとどまり、2023年1月のピークである3.5%を下回っています。円安の進行とともに、為替相場も影響を受けており、マイナス要因が懸念されています。失業率は2.6%と横ばいで推移していますが、勤労世帯の実収入が前年比で1.6%減少したことから、個人消費は厳しい状況にあります。このような背景から、国内消費は依然として鈍化する見込みです。
インバウンド消費の動向
一方、インバウンド消費は過去最高水準を維持しています。訪日客数が急増し、2024年第3四半期には26百万人に達しています。この影響で、一人当たり消費単価も207,000円に上昇しました。年間訪日消費総額は約8兆円と見込まれていますが、受入体制の不足から将来的な拡大は困難かもしれません。
需給の見通し
小売市場では、全国的に第3四半期平均の小売販売高は前年同期比で2.1%上昇しました。ただし、燃料小売販売額の減少や、前年同期に好調だった自動車や飲食料品の反動が影響し、実質では微減となっています。販売チャンネル別に見ると、ドラッグストアは5.3%の増加を記録し、百貨店も3.8%の増加が見られましたが、スーパーやコンビニは増加が鈍化し、インフレの影響を受けた形です。
特筆すべき新規出店
大規模な大型複合開発が続く中、2025年3月以降にはJR東日本が開発中の「NEWoMan高輪」が開業予定です。また、西日本鉄道が開発するワン・フクオカ・ビルディングも2025年にオープン予定で、多くの店舗が出店します。さらに、大阪駅直結のグラングリーン大阪や、個性的なブランドによる新規出店が目立ちます。
現在の賃料状況
渋谷のプライム賃料は、四半期対比で14%上昇し、坪単価25万円に達しましたが、高級物件は募集中です。ハイブランドの売上はコロナ特需から減少傾向にあり、エリアによる賃料変動がみられます。特に訪日客の多いエリアの賃料上昇圧力は高いものの、全体の賃料は横ばいで推移する見込みです。
今後の展望
今後の2年間は名目インフレ率並みの賃料水準の維持が予想されますが、再開発エリアの賃料は底上げが期待されています。また、リアルタイムデータを活かした店舗戦略が重要になってくるでしょう。テナントは細かな商圏分析を、投資家は顧客動線の分析を行い、効率的な店舗運営が求められます。
まとめ
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドの2024年第3四半期のリテール市況レポートは、多くの示唆を提供しています。新しい開発や消費動向を注視し、今後の成長に向けた戦略を構築することが求められます。