岐阜県揖斐川町で林業の就業環境改善を目指す実証試験

林業の就業環境改善に向けた岐阜県揖斐川町の実証実験

株式会社大垣共立銀行（OKB）とNTTコミュニケーションズ（NTT Com）及び関連機関が共同で実施した、岐阜県揖斐川町における林業の就業環境改善を目指す実証実験が、通信技術を利用して成功裡に完了しました。この実験は、地域デジタル基盤活用推進事業の一貫として行われ、林業の安全性や生産性向上を目指す重要なステップとなっています。

背景

岐阜県は全国で2位となる約81％の森林率を誇り、その中でも揖斐川町は91％が森林という恵まれた地域です。しかしながら、林業従事者は山間部などでの作業を行うため、モバイル通信が不十分なエリアで作業することが多く、外部と連絡を取る手段が限られていました。このため、事故発生時の救助や緊急連絡が難しく、非常に危険な状況が続いていました。さらに、通信環境が整っていないため、機材のトラブルが発生した際にも業務が非効率になるという課題も抱えていました。

実証実験の具体的内容

この実証実験は、2024年11月18日から12月20日までの間、揖斐郡森林組合の協力を受けて行われました。Starlinkやモバイル回線、Wi-Fi HaLowなどの最新の通信技術を駆使して、通信環境を整備しました。特にStarlinkは、低軌道衛星を利用し、高速かつ低遅延の通信を可能にするサービスで、山間部などの不感地域におけるネットワークを構築する上で大きな助けとなりました。加えて、Wi-Fi HaLowは920MHz帯を使用し、複数のデバイスに接続しても高速通信を提供します。

さらには、NTTのIOWN構想の一環として研究開発が進められている「Cradio」技術を使用し、地形や周囲の電波状況をもとに最適な通信端末の配置を自動的に導き出しました。この技術により、ネットワークの設定と構築が大幅に効率化されました。

コミュニケーションの向上

通信ツールとしては、トランシーバアプリ「BONX WORK」を導入しました。このアプリは、音声通話だけでなく、写真共有機能やテキストチャット機能も提供し、現場と事務所間のコミュニケーションを円滑にしました。実証実験後には、林業従事者を対象にアンケートを実施したところ、ほとんどの回答者が「安全性や安心感が向上した」と認識しており、就業環境の改善が実証されました。

今後の展望

OKBとNTT Comは、実証実験の成功を受けて、さらなるソリューションの提供と実施要件の精査を進めていきます。この取り組みは、林業だけに留まらず、他の産業における安全性や生産性向上にも寄与することが期待されています。電波不感地帯での作業環境を改善することで、地域全体の活性化にもつながることが目指されています。