岡山大学が早生樹アカシアの遺伝子解析に成功
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域の田村隆教授と住友林業株式会社の筑波研究所グループが、今までの樹木育種に革命をもたらす研究成果を発表しました。早生樹アカシア(Acacia crassicarpa)に関する網羅的遺伝子解析により、育種において重要な遺伝子のマーカー配列が同定されました。
早生樹アカシアの特性
早生樹アカシアは、驚くべき成長スピードを持つマメ科の樹木で、東南アジアやオーストラリアに自生しています。この樹木は、一般的に5年で成長し、森林を形成する能力があることから、バイオマス発電の燃料源としての活用が期待されています。しかし、カリウム含量が高く、燃焼時に耐塩性や耐病性といった育種上の課題が存在します。これらの問題を克服するための新しい育種技術が求められていました。
遺伝子解析の成果
研究チームは、次世代DNAシーケンサーを使用して、早生樹アカシアの93,317個の遺伝子を解読しました。この成果は、特に耐病性や耐塩性に関連する育種マーカーを見つける上で重要とされており、育種過程を加速化するための基盤を提供しています。
田村教授は、「今回の研究により、例えばゲノム編集を行う際に必要なターゲット塩基配列を設計することが可能となり、結果的に樹木の品種改良が短期間で行える可能性が高まった」と述べています。これにより、未来の農業や林業において、より持続可能な選択肢を提供することが目指されています。
分子育種への期待
研究成果は、早生樹アカシアの分子育種の新たな可能性を切り開くものとされています。各遺伝子の機能を詳細に理解し、それらを利用して優良品種の選抜が進むことで、環境に優しいエネルギー源が実現することが期待されています。田村教授は、「今後、より多くの謎を解明するための研究が進むことを楽しみにしています」と希望を語りました。
研究成果の公開
本研究の成果は、2024年8月29日にスイスの植物科学専門誌「Frontiers in Plant Science」に掲載され、また2024年10月23日に岡山大学の定例記者会見で詳細が発表されました。この研究は、住友林業との共同研究により進められ、科学技術振興機構からの支援も受けて実施されました。
今回の研究成果が、急速に変化する気候と環境問題に立ち向かうための新しいアプローチを提供することとなるでしょう。今後のさらなる研究の進展が期待されます。