新たなCO2リサイクル技術の挑戦
株式会社レゾナックと日本製鉄、日鉄エンジニアリング、富山大学という4つの機関が連携し、「CO2由来メタノール経由青酸、グリシン製造の研究開発」に取り組むことが決まりました。このプロジェクトは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受け、2025年度から2027年度までの期間で実施されます。
研究の背景と目的
現在、気候変動が深刻な問題となっている中で、CO2排出の削減は重要課題とされています。そのため、排出されたCO2を資源として活用する技術の開発が注目を集めています。グリシンは農薬や健康食品、電子材料などさまざまな分野で使用されている重要な化学品ですが、これまでの製造方法は化石燃料に依存していました。
このプロジェクトでは、製鉄所や火力発電所から排出されるCO2を原料として、メタノールを合成し、さらにそれを経て高価値のグリシンを生産する新しい方法を確立します。これにより、カーボンリサイクルを促進し、環境への配慮を伴った製造プロセスが実現します。
共同研究の内容
本プロジェクトでは、CO2を出発原料にしたメタノールから、グリシンを一貫して製造する技術を開発します。具体的には、前回の研究で得られた成果を基に、低温でメタノールを合成するための実用的な触媒プロセスを開発します。また、レゾナックは、すでに保有している技術を活かし、安定的かつ高品質なグリシンを製造するための体制を整えています。
この共同研究では、以下の役割分担がなされます。
1.
CO2由来メタノール合成触媒の改良 - 日本製鉄、レゾナック、富山大学が共同で取り組みます。
2.
メタノール合成触媒の量産化 - 日本製鉄、日鉄エンジニアリング、レゾナックが協力します。
3.
メタノールからの中間体とグリシン製造プロセスの開発 - レゾナックが担当。
4.
CO2由来メタノールを用いたグリシン製造プロセスの最適化 - 日本製鉄、日鉄エンジニアリングとレゾナックが共同で行います。
期待される成果と社会への影響
この研究の成果は、特に環境への配慮が求められる現代社会において、大きな意味を持つでしょう。CO2を資源として利用する技術の確立により、持続可能な製造プロセスが実現すれば、カーボンリサイクルの推進が期待されます。また、グリシンの需要が今後も増加する中で、環境負荷を低減しつつ高品質な素材を安定的に供給することで、業界全体にポジティブな影響を与えると考えています。
まとめ
レゾナック、日本製鉄、日鉄エンジニアリング、富山大学の4者によるこの共同研究は、CO2の利用という観点から、化学品の製造方法を変革しようとしています。環境保護と産業発展の両立を図ったこのプロジェクトは、今後の持続可能な社会の実現に向けた重要なステップとなることでしょう。期待される成果がどのように社会に実装されていくのか、今後の進展が注目されます。