アメリカでの学習療法
2012-07-06 08:00:01
米国で確認された「学習療法」の効果とその可能性
米国で確認された「学習療法」の効果とその可能性
学習療法の背景と実施
日本公文教育研究会くもん学習療法センターが、東北大学の川島隆太教授と共同で、アメリカ・オハイオ州にて実施した学習療法のトライアルが、海外初の実証実験として注目を集めました。この試みは、2011年5月から6ヶ月間にわたり、エライザ・ジェニングス・シニア・ケア・ネットワークと協力し、認知症を患っている23名を対象に行われました。
このトライアルでは、日本での学習療法と同様に、利用者の認知機能の維持・改善が見られ、さらに施設のスタッフのモチベーションや介護ケアの質の向上も確認されました。このことから、文化や言語の壁を超える学習療法の有意性が示されたと言えるでしょう。
学習療法とは
学習療法は、認知症の維持・改善を目指す非薬物療法で、音読や計算を中心とした学習を通じて、学習者と支援者のコミュニケーションを促進します。これにより、認知機能やコミュニケーション能力、身辺自立機能といった前頭前野の活性化を試みています。現在、日本では1400の高齢者介護施設で採用されており、215の自治体において「脳の健康教室」も展開されています。
トライアルの実施過程
トライアルの実施施設であるエライザ・ジェニングスでは、120年にわたる高齢者介護の歴史があり、「パーソン・センタード・ケア」、すなわち「高齢者を真ん中に置くケア」を理念としています。2010年6月に学習療法と出会い、トライアルへの参加を決意しました。具体的には、くもん学習療法センターがスタッフの研修を行い、約6ヶ月間の試行錯誤を経て実施が始まりました。
トライアルは米国倫理審査委員会の認可を得て行われ、スタート時には認知機能や行動の観察が行われました。学習療法は、学習者2名に対してサポーター1名がつく形式で進行しました。
トライアルの成果
定量的成果
トライアルの結果、認知機能を測る基準であるFAB(前頭葉機能検査)やMMSE(認知機能検査)の数値が明確に改善しました。特に、学習療法を受けた介入群では、6ヶ月後に明らかな向上が見られました。具体的には、介入群のFABはスタート時の6.7から6ヶ月後に7.8へ、MMSEは15.8から18.8へと改善されました。
定性的成果
定性的な面でも、学習開始から数日で学習者に顕著な変化が見られました。例えば、ある学習者は名前を書けなかったのが、数日後にはフルネームを書くことができるようになりました。別の学習者は、数の配置学習で急速な改善を遂げ、周囲のスタッフにも驚きの反応がありました。これらの成果は、単に認知機能の向上にとどまらず、周辺症状の改善にも波及しました。
文化や言語の壁を越えた成功の要因
学習療法の成功は、実践する側の「志」によるものです。施設全体が高齢者を大切に思う気持ちを持ち続けることが、大きな成果を生むことがわかりました。特にエライザ・ジェニングスは、「パーソン・センタード・ケア」の理念を30年以上も実践してきたため、自ずと学習療法も受け入れやすい環境にありました。施設の理念を体現するスタッフが支援者となることで、成功に繋がりました。
今後の展望
このトライアルの成果を受けて、エライザ・ジェニングスでは、2012年5月から学習療法を正式に他の関連施設にも導入することを決定しました。これにより、認知症の課題が世界的に共通するものとして認識され、今後の展望が広がることが期待されています。認知症予防の観点からも、学習療法が有意な役割を果たすことが期待されます。
さらに、学習療法を通じての新たな効果や地域の介護ネットワークの広がりも報告されています。介護スタッフのモチベーション向上や施設全体の雰囲気の改善も視野に入れ、介護業界の新しいモデルとして広がる可能性があります。
まとめ
学習療法は、単なる認知症予防を超え、多くの人々の生活の質を向上させるポテンシャルを秘めています。文化や言語を超えた普及が期待され、今後の発展が楽しみです。これからも目が離せない研究と実践が続くことでしょう。
会社情報
- 会社名
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株式会社 日本公文教育研究会
- 住所
- 大阪府大阪市淀川区西中島5丁目6番6号公文教育会館
- 電話番号
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03-6836-0030