酷暑と気候変動がもたらす未来の海洋事情
近年、異常気象が続く中、温暖化の進行が海洋環境に大きな影響を及ぼしています。2024年には「国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)」が開催され、各国が集まり気候変動対策に関する議論が行われます。特に海洋温度の上昇は、漁場や魚の種類、漁獲量に深刻な影響を及ぼしており、今年は日本近海でサケやサンマの不漁が報告されています。これは単に漁業者にとっての経済的な問題にとどまらず、魚食文化の存続にも影響を与えかねません。
未来を見据えた「くら寿司」の取り組み
気候変動の影響を受ける回転寿司業界において、くら寿司は実際の漁業関係者と協力し、海の環境を守るための取り組みを強化しています。今回、同行取材を通じて直接ヒアリングを行い、実践的な施策を見聞しました。特に注目されるのは、気候変動に適応し、新しい漁獲状況に対応するための「一船買い」契約です。
漁業と生態系を守るための「一船買い」
愛媛県漁業協同組合の塩見支所長が語ったところによると、海水温の上昇に伴って獲れる魚の種類が変わってきています。従来の主力魚種が低迷する中、くら寿司と養成している「一船買い」契約が安定した収入を保証し、漁業者の経済基盤を支えています。この取り組みは、ただ魚を売るだけでなく、漁師たちのコミュニティをも強化しています。さらに、若手漁師を育成するためのインフラ整備も進めており、長期的な展望を持った活動が進められています。
漁場の変化に対応する新たなアプローチ
漁場の変化に適応するためには、ただ新しい魚を調達するだけでは不十分です。しかも、獲れる魚の種類が事前に分からないため、漁業者にとってはリスクを抱えています。そこで、くら寿司は天然魚のプロジェクトを通じて、低利用魚の価値を向上させる取り組みを進めています。消費者に新しい魚の美味しさを発信し、使用することで、漁業者の収入も安定します。 例えば、かつては食べる機会が少なかったシイラを使ったメニューも人気が高まりつつあります。これにより、漁業者と消費者の双方に利益が生まれる仕組みが作られています。
環境DNA研究による未来予測
今後の海の生態系をより正確に把握するためには、環境DNAの研究が鍵となるでしょう。東北大学の近藤教授が進めるこの研究により、生物多様性の維持や漁場の変化の予測が可能になると期待が寄せられています。データを集め、解析することで、未来の海洋状況について具体的な数値を示すことができ、漁業者や市場にも有益です。
結論:共に未来を築くために
気候変動が引き起こす海洋環境の変化に対し、くら寿司は単なる企業としてではなく、漁業者や消費者と共に新たな頭脳を結集し、持続可能な未来を築こうとしています。これらの取り組みは、今後の寿司業界だけでなく、日本の伝統的な魚食文化を次世代に引き継ぐためにも重要です。未来の海を守るため、企業と地域、消費者が一体となって取り組んでいくことが求められています。