はじめに
企業の人事部にとって、従業員のエンゲージメントを向上させることは常に重要な課題です。最近、三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行、三井住友信託銀行、りそな銀行の4社が共同で展開している「信託未来プロジェクト」が注目を集めています。このプロジェクトでは、従業員の金融リテラシー(以下FL)が企業全体のパフォーマンスやエンゲージメントにどのような影響を与えるかを調査しており、2024年に実施された調査結果が公開されました。
調査の背景と目的
金融リテラシーの重要性は、国や企業にとっても無視できないテーマです。政府は2022年4月から金融経済教育を必修化し、さまざまな世代に対してその知識を広める取り組みを強化しています。この流れの中で、企業にも従業員の金融教育を推進する役割が求められています。従業員のFL向上は、企業の福利厚生や社会貢献にも寄与するため、積極的に取り組むべきです。
調査結果のまとめ
1. FLと仕事のパフォーマンスの関連性
調査では、従業員のFLと仕事のパフォーマンスには確かな正の相関が見られました。特に、FLが高い従業員は、仕事に対するパフォーマンスも良好であり、エンゲージメントの向上が見受けられました。このことは、FLを高めることが企業全体の成果に直接貢献する可能性を示しています。
2. 転職意向との関連性
当初はFLが高まることで転職意向が増加するのではないかとの懸念もありましたが、調査結果はその懸念を覆すものでした。FLが高いからといって必ずしも転職の回数が増えるわけではなく、その点において企業は安心材料を得たと言えるでしょう。
調査手法
この調査は、全国47都道府県を対象に、20歳から69歳までのインターネット利用者を対象とした定量調査です。主な調査方法はWebアンケートで、500件の有効回答を得てデータを分析しました。また、専門商社においては426名の正社員を調査対象とし、同様にWebアンケートを通じてデータを収集しました。
結論
今回の調査結果は、従業員のFLを高めることが、個々のファイナンシャル・ウェルビーイングだけでなく、企業全体のエンゲージメント向上にも寄与することを示唆しています。企業はFL向上に注力することで、従業員の満足度を高めつつ、業務の生産性向上を図ることができるでしょう。信託銀行4社は引き続き、金融経済教育の普及や企業年金業務を通じて、企業の人的資本経営をサポートしていくことを目指します。
詳細な調査レポートは、信託未来プロジェクトの専用サイトで確認できます。ここで得られる情報は、企業の人事戦略における新たなヒントとなるはずです。