LNT Japanの新たな取り組み
2025年2月、Leave No Trace Japan(LNT Japan)は、環境保全や青少年教育、観光開発に寄与する若手研究者を支援するため、新たに〈2025年LNT研究助成〉を設立し、募集を開始しました。そして厳選なる審査の結果、3名の若手研究者が選ばれました。この助成は2025年4月1日から2026年3月31日までの1年間のもので、各分野での持続可能な取り組みを通じて貴重なデータが得られることが期待されています。
研究者たちの取り組み
台湾の「山林開放」と登山者教育
松金ゆうこさんは、台湾の登山事情を研究しています。台湾では、総面積の約70%が山地であり、3000メートルを超える高山も点在しています。かつては人々にとって近寄り難い場所でしたが、近年は登山が余暇活動として広がっています。特に、「山林開放」の進展に伴い、登山者数の増加が見られており、これに対処するために登山者教育が積極的に進められています。
LNTリサーチチームは、松金さんの研究がアジアでは先駆的なLNTの7原則と登山者教育の関係に焦点を当て、その成果が日本でのLNTの普及に寄与することを評価しました。
中小規模スキー場の存続メカニズム
黒澤俊平さんは、中小規模のスキー場に焦点を当て、その持続可能性を観光地理学の視点で探求しています。彼は北海道やスイスのスキー場の調査を行い、小規模スキー場が地域資源としてどのように機能しているかを考察しています。
「スキー文化が育まれるヨーロッパから、持続可能なスキー場の運営方法を学ぶことに意義がある」と彼は語ります。さらに、環境への負荷を抑えたレクリエーションが地域の環境保全にも寄与することを明らかにしようとしています。
野生哺乳類による遊歩道利用の影響
井上輝紀さんの研究は、遊歩道が野生哺乳類やその散布に与える影響に焦点を当てています。彼は、これまでの糞や種子数のカウントに加え、センサーカメラやDNA情報を活用し、遊歩道が動物に与える影響を解明することを目指しています。人間、動物、植物の三者が共生するための新たな視点を提供しようとしています。
LNT運動の広がり
LNTとは、米国で発展したアウトドアにおける行動基準で、94ヵ国に広がりました。環境への影響を最小限に抑えつつ、アウトドアを楽しむための7つの原則があり、多くの人に受け入れられています。
LNT Japanは、設立からわずか3年で会員数が約1,000人に達し、教育の教科書に掲載されるなど、急速に認知が広がっています。2024年には公式ブランチとして認定され、より多くの人々にLNTの考え方が広まることが期待されています。
まとめ
LNT Japanが支援する若手研究者たちの取り組みは、自然との共生を考える上で新たな視点を提供しています。土地や文化に根ざした研究が進む中で、これらの成果が持続可能な社会の実現に向けてどのように寄与するのか、今後の展望が楽しみです。