平安の才女、紫式部と「地獄」の伝承
誰もが知る平安時代を代表する作家、紫式部。その名作『源氏物語』は、千年以上もの時を経てもなお、人々の心を捉え続けています。恋多き主人公・光源氏の華麗で儚い生涯、そして平安時代の王朝文化や貴族社会の風俗――『源氏物語』は、当時の日本社会を垣間見れる貴重な文学作品として、世界中で高く評価されています。
しかし、そんな紫式部には、意外な伝承が残されています。それは、紫式部が死後、地獄に堕ちたというものです。
平安時代の終わり頃より広まったこの説によれば、紫式部が『源氏物語』という「不道徳な作品」を世に送り出し、人々の道徳を堕落させたことが、地獄行きを招いたとされています。『源氏物語』を読んだ者も、同様に地獄に堕ちるとまで言われていたようです。
死後の救済としての「源氏供養」
この恐ろしい伝承から生まれたのが「源氏供養」です。『源氏物語』を供養することで、紫式部を地獄の苦しみから救済し、同時に『源氏物語』を読んだ者も救済される、という考え方が広まりました。
まるで、小説が招いた災厄を、小説自体の供養によって鎮めるという、興味深い信仰です。これは、当時の人々が『源氏物語』にどれほど強い影響力を感じていたのかを示す、一つの証拠と言えるでしょう。
静岡文化芸術大学二本松教授による講座
NHK文化センター浜松教室では、静岡文化芸術大学教授である二本松康宏氏による講座「紫式部は地獄に落ちた!?―源氏供養と京都冥界めぐり―」が開催されます。
二本松教授は、「伝承文学」「日本文学(中世)」を専門とする第一人者。数々のテレビ出演や著書を通じて、その専門知識を広く一般に伝えています。
今回の講座では、京都に点在する紫式部の墓や供養塔を手がかりに、「紫式部が地獄に落ちた」という伝承の真相や「源氏供養」の実態に迫ります。平安時代の歴史や文化、そして人々の信仰観を知る上で、貴重な機会となるでしょう。
講座では、単なる歴史解説にとどまらず、京都の史跡を訪れるかのような、臨場感あふれる内容が期待できます。古都の神秘的な雰囲気と、歴史の謎解きに興味のある方は、ぜひご参加ください。
講座概要
講座名: 紫式部は地獄に落ちた!?―源氏供養と京都冥界めぐり―
講師: 二本松康宏(静岡文化芸術大学教授)
開催日時: 2024年11月22日(金)13:00~14:30
受講料金: 会場参加:NHK文化センター会員2,860円/一般3,432円、オンライン参加:会員/一般3,300円(いずれも税込)
その他: 見逃し配信あり
主催: NHK文化センター浜松教室
二本松康宏教授について
1966年生まれの長野県出身。専門は伝承文学と日本文学(中世)。『曽我物語の基層と風土』『城郭の怪異』『中世の寺社縁起と参詣』『諏訪信仰の変奏—中先代の乱から甲賀三郎神話へ—』など、数多くの著書があります。テレビ出演も多数経験しており、その分かりやすい解説で知られています。
この機会に、平安時代の歴史と文学、そして独自の信仰文化について、深く学ぶことができます。興味のある方は、ぜひお申し込みください。