RNAとタンパク質の新たな相分離メカニズムを模索
慶應義塾大学大学院理工学研究科の安田一希博士課程2年を中心とした研究チームが、RNAとタンパク質からなる生体分子の凝縮体を再現する革新的なRNA粗視化モデルを開発しました。この成果は、RNAが引き起こすさまざまな生物学的現象の理解を深めるための重要な一歩となることが期待されています。
研究の背景
タンパク質とRNAは細胞内で重要な役割を果たしており、特に多様な生体分子の相互作用によってさまざまな生命現象を生み出しています。その中で、相分離現象はこれらの生体分子同士が混合し、新たな機能的な凝縮体を形成する過程を指します。これまでの研究では、こうした現象が多くの病理に関連していることが明らかにされていますが、そのメカニズムは十分に解明されていませんでした。
新たなRNA粗視化モデルの開発
本研究では、分子動力学シミュレーションに活用されるRNAの粗視化モデルを創出することで、特にタンパク質とRNAの凝縮体の形成過程を実際にシミュレーションすることが可能になりました。このモデルは、RNAが関与する相分離機構を分子レベルで探る手段として期待されています。
研究チームは、様々なタンパク質とRNAがどのようにして相互作用し、凝縮体を形成するのかを詳細に解析した結果、新しい相分離機構を解明しつつあります。この成果は、生物学や医学の分野において、特定の病気のメカニズム理解や新たな治療法の開発に寄与する可能性があります。
研究成果の発表
本研究の成果は、2025年2月26日に米国化学会の学会誌「Journal of Chemical Theory and Computation」に発表されます。これは、RNAとタンパク質がどのようにして呼応し、凝縮体として機能するのかという科学的な理解を深めるだけでなく、さらなる新技術の開発にもつながるでしょう。また、これにより疾病の治療法を構築する道筋が開かれることが期待されています。
本研究の詳細については、慶應義塾大学のプレスリリースをご覧ください。