AIを活用したカスタマーハラスメント対策の新たな試み
サクサグループのサクサとシステム・ケイが、深刻な社会問題であるカスタマーハラスメント(通称:カスハラ)の対策として、音声AI技術を活用した共同PoC(概念実証)を2025年10月より開始します。この取り組みでは、先進の音声・映像解析技術を用いて現場の対応力を向上させ、職場環境をより良くする新しい手法を可視化することを目指します。
カスハラの背景と重要性
2025年6月4日、改正労働施策総合推進法が国会で成立しました。この法案には、企業にカスハラ対策を義務づける内容が含まれ、企業にとっては無視できない課題となっています。カスハラとは、顧客が従業員に対して過剰な要求や威圧的な態度を取る行為を指します。近年、この問題は特にコールセンターや店頭、公共の場で目に見えるようになっており、厚生労働省や経済産業省もガイドライン策定を進めています。
従業員がカスハラにさらされることで、メンタルヘルスの悪化や離職率の増加、企業ブランドの損失などが懸念されます。しかし、記録が残りにくいことや、問題が「見えにくい」ことから、迅速に対応することが難しいのが現状です。
サクサは、企業の「声」や「空間」に注目し、ビジネスホン技術とシステム・ケイが持つ音声や映像AI技術を結集し、これらの問題を解決する新たな方法を探ります。具体的には、「いつ・どこで・誰が・どのような状況で問題に直面したのか」を詳細に把握し、その情報をもとに企業が適切に対応・支援できる仕組みを構築することがこのPoCの目的です。
PoCの具体的な内容
フェーズ1:音声AIによるNGワード検出
2025年10月から開始されるフェーズ1では、サクサ製ビジネスホン「PLATIA」シリーズに搭載された通話録音機能を活用し、通話データを自動的にクラウドにアップロードします。そして、システム・ケイの提供するAIエンジンが音声内容をリアルタイムで解析し、暴言や脅迫、人格否定などのNGワードを検出します。これにより、以下のアクションが自動的に実行されます。
- - 管理者端末へのリアルタイム警告
- - 該当通話の録音データを自動保存
この仕組みによって、現場の従業員を守り、迅速な初動対応が可能となる体制が整えられます。
フェーズ2:映像・音声解析の統合
フェーズ2では、ネットワークカメラと高感度マイクを使用し、対面接客の現場でリアルタイムの映像録画と音声解析を行います。これにより、音声だけでは把握できなかった対面でのハラスメントにも対応でき、証拠映像の保存や分析にも活用されます。また、LINEによる即時通知も実施予定です。
導入後の期待効果
このソリューションの導入により、従業員が安心して業務に取り組める環境が整備され、企業としての職場安全対策が向上することが期待されます。カスハラが発生した際の記録が自動的に残ることで、トラブル対応や再発防止策の策定、法的対応も容易になります。
未来への展望
PoCの成果をもとに、2026年度内には製品をリリースする予定です。今後は、自治体、医療機関、教育機関、金融機関、店舗業、公共交通機関など、さまざまな業種や業態への展開を目指しています。また、AI解析の精度向上やマルチ言語対応、既存システムとの連携強化を進め、包括的な安全・安心ソリューションの実現を目指します。
この新たな取り組みは、企業におけるカスハラ対策の未来を明るく照らし、安心して働ける環境づくりへとつながるでしょう。