慶應義塾大学医学部の研究グループは、神奈川県立産業技術総合研究所との共同研究で、力触覚技術を搭載した鑷子型デバイスを開発しました。このデバイスは、脳腫瘍摘出術において、腫瘍と正常組織の硬さの違いを感知することで、より安全かつ精密な手術を可能にすることを目指しています。
力触覚技術とは、触覚情報を増幅・伝達し、物体の硬さや質感などを定量化できる技術です。脳腫瘍手術では、腫瘍と正常組織の境界が不明瞭な場合があり、熟練した医師でも判断が難しい場合があります。しかし、このデバイスを使えば、手術中にリアルタイムで組織の硬さを把握することができ、より正確な腫瘍切除が可能になります。
研究グループは、動物実験でこのデバイスの有効性を確認しました。結果、デバイスが脳腫瘍と正常組織の硬さの違いを感知し、その情報を医師にフィードバックできることを実証しました。これは、脳腫瘍手術の安全性向上だけでなく、手術中の組織判別を可能にする画期的な技術として注目されています。
今後の研究では、より微細な硬さの変化を感知できるデバイスの開発や、リアルタイムの位置情報との連携などが計画されています。これらの技術革新により、脳神経外科手術の精度が向上し、患者さんのQOL(生活の質)が向上することが期待されます。