低濃度水素吸入による組織内水素濃度の定量解析とその安全性の考察
2014年、MiZ株式会社は国立成育医療研究センターや国立感染症研究所と共同で、体内部の水素濃度を高感度かつ安定的に測定するための新たな手法を開発しました。それが、気密チューブ法と呼ばれるものです。この手法により、ラットを用いて水素吸入および水素水の経口投与による血液や各臓器の水素濃度の変化を観察しました。本研究の結果は『Scientific Reports』に掲載されています。
水素の生体内効果
水素には活性酸素の一種、特にヒドロキシルラジカル(•OH)を選択的に消去する抗酸化作用が報告されています。この特性は、脳梗塞や心筋梗塞などの虚血再灌流障害、そして炎症性疾患や神経変性疾患に対する保護的効果を示しています。しかし、水素の正確な組織内濃度を測定する方法はこれまで存在しませんでした。
気密チューブ法の利点
気密チューブ法は、ガスクロマトグラフィー技術を活用しつつ、組織採取時の水素の揮発を防ぎます。これにより、血液や各種組織内の水素濃度を経時的に定量することが可能となり、研究者たちはさまざまな投与経路からの水素量がどのように変化するかを詳しく調査することができました。
実験方法
実験では、ラットに4%の水素を含むガスを60分間吸入させ、また水素水を経口摂取させる群を設け、各種臓器(肝臓、腎臓、心臓など)の水素濃度を測定しました。水素吸入群では、組織への水素の移行は徐々に行われ、30分後には十分な濃度に達しました。一方、水素水群では、初期は急上昇しましたが、時間とともに速やかに減少しました。
ヒトにおける水素濃度の変化
2012年のOnoらの研究によると、低濃度の水素吸入(3〜4%)では、ヒトの血中水素濃度が約20分で平衡に達し、吸入中止後に急速に低下することが分かっています。水素は非常に小さな分子であり、体内に長時間留まることはありません。
高濃度吸入の危険性
同時に、有害性が指摘されているのが高濃度水素吸入です。MiZ株式会社は、日常環境において水素濃度が10体積%を超えると爆発の危険性があると警告しています。この値は、あらゆる吸入環境においてのデータから導き出されたものであり、安全な水素吸入のためには10体積%以下に保つ必要があります。
安全な水素吸入への提案
研究結果により、低濃度水素吸入でも•OHを消去するのに十分な水素分子が供給されることが示されました。そのため、高濃度での吸入は必要ないことが明確になり、さらなる研究や安全性の確保に向けた取組みが期待されます。
結論
MiZ株式会社とその共同研究チームが示した知見は、安全な水素吸入の実現に向けて重要なステップです。今後の水素吸入器開発においては、吸入環境に対する濃度管理と安全基準の遵守がますます重要になってくるでしょう。水素の持つ特性を活かしつつ、それを安全に活用する方法を模索し続けることが求められています。