介護業界の深刻な人材不足
介護業界は、慢性的な人材不足に直面しています。厚生労働省の推計によると、2040年には日本で約69万人の介護人材が不足するとされています。特に通所介護(デイサービス)においては、送迎業務が全業務時間の約30%を占めるため、スタッフが本来の業務に集中できないという課題があります。
一方で、介護タクシーが直面しているのは、単発の依頼による収益の不安定さです。多くの業者は個人事業主の形態を取り、安定したビジネスを確保するのが難しい状況です。このような複雑な問題を、ソーシャルムーバー株式会社がシェアリングエコノミーの視点から解決しようとしています。
ケアドライブ事業の概要
ソーシャルムーバーが立ち上げた「ケアドライブ事業」は、介護事業所と介護タクシー事業者をつなげるプラットフォームです。この事業の目的は、介護タクシー事業者の稼働率を高めることで、介護業界の人材不足を補うことにあります。
具体的には、介護事業所が送迎業務を外部に委託することにより、コア業務に集中できる環境を作り上げます。これにより、固定費の削減や事故リスクの軽減、さらには採用活動にも良い影響を与えることが期待されています。
また、介護タクシー事業者は、定常的な仕事を通じて収益の安定化を図ることができ、運営のノウハウを蓄積していくことが可能になります。このように、双方にとってメリットのある仕組みが整えられているのです。
介護タクシーの導入状況
現在、群馬県内でのケアドライブ事業は徐々に普及してきています。2025年1月には、介護施設15施設、そして介護タクシー8事業所が連携し、16台のタクシーが運行しています。実際の利用者からも高い評価を得ており、新たに15台が介護タクシー事業に参入しています。それによって、介護施設の利用者がなじみのタクシーを利用してスーパーや病院に通うケースも増えています。
資金調達の意義
最近、ソーシャルムーバー株式会社はプレシリーズAラウンドにおいて5,000万円の資金調達を完了しました。この資金は、主にケアドライブ事業の発展に使われる予定です。具体的には、群馬県内での事業拡大、ドライバー育成プログラムの整備、効率的なオペレーション体制の構築、さらにシステム機能の強化が挙げられています。
また、近隣県である栃木県や埼玉県、長野県などの市場開拓も見込んでおり、地域の企業との連携も進めていく意向です。
投資家の期待
1982インパクトファンドの代表理事である吉村英毅氏は、介護業界の人材不足という社会問題にライトを当てたこの事業に対し、社会的なインパクトをもたらすとの期待を表明しています。このような認識が、ソーシャルムーバーへの投資の大きな決め手となったようです。
ソーシャルムーバーの未来
代表取締役の北嶋史誉氏は、地域社会に根ざした持続可能なモデルを構築することを目指しています。今回の資金調達を通じて、ケアドライブ事業をさらに強化し、全国展開の基盤を整えていくとの意気込みです。「地域課題の解決は、地域の力で」との理念をもとに、地域資源を統合した新しいビジネスモデルを築いていく構想です。
会社概要
- - 会社名: ソーシャルムーバー株式会社
- - 所在地: 群馬県前橋市
- - 設立: 2023年1月
- - 代表者: 北嶋史誉
- - 事業内容: ケアドライブ事業の運営
- - Mission: 移動弱者のための第三の交通インフラを作る