全国178社が関与する巨大なリスキリング助成金不正受給問題
2025年12月19日、東京労働局の発表により、日本全国で177社が特定の訓練機関による不正受給に関与していたことが報告されました。この事案は、人材開発支援助成金である「事業展開等リスキリング支援コース」という制度を利用し、合計19億4,000万円という膨大な額の返還請求が行われる事態に至っています。特に、多くの中小企業にとって、平均1千万円を上回る負担がかかるこの問題は、経営の存続を脅かす深刻な事態を引き起こしています。
不正受給に関わる驚くべきスキーム
東京労働局の調査によると、これら178社は「申請事業主に訓練経費の実質的負担なしで助成金を申請させるスキーム」に基づき、訓練機関・コンサルティング会社が提案した甘言に乗せられた形で不正に資金を得てきたとのことです。このような勧誘は「助成金を使えば実質0円」「手出しなしで研修可能」という内容で、多くの経営者がこれを信じて不正受給に手を染めてしまったとされています。
不正受給がもたらす企業への影響
不正に関与した企業は、以下のような重大なリスクに直面します。
1.
巨額の金銭負担: 受給額の全額返還に加え、20%の違約金、さらに受給翌日から発生する年3%の延滞金を一括請求されます。
2.
社名公表と信用失墜: 原則として不正受給を行った企業名や代表者名が公表され、これが「デジタルタトゥー」として半永久的に残ります。
3.
助成金の受給停止: あらゆる雇用関係助成金の受給資格が5年間剥奪され、再び助成金を受けることが難しくなります。
4.
刑事責任の追及: 悪質性の高い事案と判断される場合、刑事告発の可能性もあり、特に組織的な関与が疑われる事案のため、慎重な対応が求められます。
企業が取るべき対応と法的サポート
不正受給の指摘を受けた企業が取るべき対応は、次の3段階に集約されます。
1.
全額納付による社名公表回避: 返還請求額が100万円以上の場合でも、1か月以内に全額納付することで社名公表を回避することが可能です。急ぎ行動することが推奨されます。
2.
任意交渉による支給措置撤回: 労働局に対して「不正ではなく過失」と主張し、支給の処分撤回を粘り強く交渉することが重要です。
3.
審査請求の法的手続きを行う: 交渉が進展しない場合、雇用保険法に基づき審査請求を行う必要があります。この手続きには厳しい期限が設けられているため、注意が必要です。
モノリス法律事務所のサポート
弁護士法人モノリス法律事務所は、IT・インターネット・ビジネス法務の専門家として、過去の「雇用調整助成金」事案等の経験を活かし、今回の不正受給問題に特化した法的サポートを提供します。当事務所では、LINE、Slack、Zoom、Chatworkなどのログ分析を通じて、事業主が主体的な首謀者ではなく、制度に巻き込まれた被害者であることを証明するための証拠保全にも力を入れています。
終わりに
国全体を巻き込む大規模な不正受給問題が明るみに出た今、企業側は冷静かつ迅速に対応を行い、不正受給の法的責任を軽減するための努力が求められています。私たちモノリス法律事務所は、その再出発を全力で支援する用意があります。