水道管の腐食度を見える化！非破壊電気探査技術による実証実験

水道管の腐食度を見える化する新技術

水道インフラの老朽化は現在、国内の多くの地域で深刻な問題となっています。特に市街地に埋設されている水道管は、経済成長期に整備されたものが多く、耐用年数を超過しているものが2割以上に達すると言われています。この状況を受けて、国立研究開発法人の産業技術総合研究所（以下、産総研）は画期的な非破壊電気探査技術に基づく実証実験を福岡市で開始しました。これは、水道管の腐食度を迅速に推定するための重要なステップとなります。

非破壊で土壌の腐食リスクを測定

この新技術では、高周波交流電気探査装置を使用し、地表面から非破壊で土壌の比抵抗を測定することが可能です。従来、水道管の腐食を調査するためには地下を掘削する必要がありましたが、これでは時間と手間がかかり、非常に非効率的でした。産総研は、舗装を傷つけることなく、土壌の腐食リスクを評価できる方法を開発してきました。

新たな実証実験

今後、無人走行車両（UGV）を活用し、土壌の比抵抗を迅速に広範囲で測定する予定です。実証実験では、福岡市のモデル地区で水道管の更新工事に伴い、埋設されている水道管の深度における土壌の比抵抗を測定します。また、実際に採取された土壌データと比較することで、腐食の進行度を評価し、高い確度で水道管の状態を予測することを目指しています。

課題と展望

水道管の腐食度はさまざまな要因に影響されますが、周囲の土壌の組成や酸性度も大きな要素です。特に、土壌の比抵抗が低い場合は電食が進行しやすいとされており、短期間で急速に腐食が進む可能性もあります。このため、非破壊電気探査技術は、全国の水道インフラの適切な管理と更新において非常に重要です。

社会における意義

実証実験の成果は、市街地における水道管の管理方法にも大きな影響を与えます。今後、全国的に実施される予定の実証実験を通じて、蓄積されたデータは水道管の更新優先順位付けや腐食リスク評価に活用されるでしょう。この新しい手法が定着すれば、水道関連の企業はもちろん、自治体においても効果的なインフラ管理が実現されることが期待されます。

この技術は、ただ水道管の健康状態を把握するだけでなく、次の世代への持続可能な水道インフラのリーダーシップを指し示すものでもあります。水道管の腐食度をいかに早く正確に把握し、適切な対策を講じるかが、今後の水道管理における大きな鍵を握ることになるでしょう。