熊本大学教授が土器圧痕研究の成果を英で出版
熊本大学大学院人文社会科学研究部に所属する小畑弘己教授が、2006年からの研究成果をまとめた著書を英国の考古学関連出版社BARから発表します。この本のタイトルは『Handbook of Plant and Insect Impressions in Archaeological Ceramics -Case studies from prehistoric Japan-』で、先史日本の土器に関する圧痕分析の重要性を論じています。
本書の目的と特色
本書は、土器圧痕学の基礎的な原理から、その研究手法、さらには得られた成果を体系的にまとめたものです。小畑教授は、これまでにも英国の考古科学雑誌やアメリカの電子ジャーナルで成果を発表してきましたが、本書はより包括的な視点で研究を整理しています。特に注目されるのは、X線CTスキャナーを駆使した調査手法で、これは日本国内外でも類を見ないものです。
本書には、圧痕分析の歴史や圧痕法による科学的進歩、さらなる革新、植物と昆虫の同定方法などが含まれており、各章には図や写真が豊富に掲載されています。これにより、視覚的にも理解しやすい構成になっています。
期待される影響
土器の圧痕を調査する手法は世界各地で一部実施されていますが、日本における包括的なアプローチは独自のものです。小畑教授の研究が明らかにした新事実は、今後の先史考古学において大きな影響を及ぼすことが予測されます。特に、土器の圧痕を分析することで見えてくる当時の植物や昆虫の利用は、縄文及び弥生時代の文化理解に新たな光を当てるでしょう。
書籍の国際的評価
本書は、査読段階から高い評価を受けており、研究者からは「世界レベルで考古学的方法に重大な貢献をする」との声も上がっています。ドイツ・ハイデルベルク大学の准教授であるマリア・シノトウ氏は、本書が日本考古学の新たな発展を促すと指摘しています。また、奈良国立文化財研究所の庄田慎矢氏は、豊富な図と写真を通じて日本の先史考古学の研究動向を知る貴重な資料であると評価しました。
研究の背景
小畑教授は、2020年秋から文部科学省の科学研究費に基づくプロジェクト「土器を掘る」を進めてきました。この研究は土器圧痕の総合的な理解を目指しており、本書はその成果の一環として位置づけられています。研究成果は、アジア各地で考古学を学ぶ学生にとっても重要なバイブルになること間違いありません。
著書の出版日は2024年10月31日となっており、多くの関心が寄せられています。Yこれを機に、土器圧痕研究が国際的にさらに広がり、考古学の発展に寄与することが期待されています。
詳しい情報や連絡先については、熊本大学大学院人文社会科学研究部小畑研究室のホームページをご覧ください。
熊本大学 研究室のHP