自動車整備業の厳しい現状
令和4年度における自動車整備業の休廃業・解散についての調査結果が発表され、驚くべき数字を叩き出しています。2024年度中に「自動車整備」事業者の休廃業・解散件数が382件に達し、加えて倒産も63件含めると、合計445件もの事業者が市場から姿を消しました。この数字は過去最多を記録したもので、業界の危機的な状況を浮き彫りにしています。
経営を揺るがす悪条件
自動車整備業界では、様々な原因が重なり、経営環境が非常に厳しくなっています。まずは、パーツの仕入価格や人件費の高騰が挙げられます。これに対し、消費者のニーズや整備士不足が影響し、受注が限られていることが問題です。また、少子高齢化によって自動車ユーザー自体が減少しており、このままでは業界全体が縮小していく危機感すら芽生えています。
整備士不足の深刻な影響
特に、整備士の不足が業績に深刻な影響を与えています。若手の整備士希望者が減少している中、高齢化が進むことで、現場の人手が足りないという状況が常態化しています。その結果、納期の遅延が発生し、受注数も制限されることが増えています。さらに、高齢化した整備士たちのリタイアが進む中、若手を育成する環境も不足しており、持続可能な形での人材確保が難しくなっています。
電動車両への対応が課題
最近では、電動車両や先進運転支援システム(ADAS)搭載車の整備ニーズが増えている一方で、街の整備工場がこれに対応できないケースも少なくありません。このため、顧客はメーカーの正規ディーラーへと流れてしまい、地域の整備業者はさらに厳しい立場に追い込まれています。
保険修理の単価低迷
加えて、自動車保険を利用した修理の単価抑制が、整備業者の収益を圧迫しています。人件費や材料価格が高騰している一方で、保険会社からの受注ではコスト削減が求められるため、結局は利益が上がらないという悪循環に陥っています。この環境下で半数以上の整備業者が赤字を計上し、業績を悪化させているという現実があります。
業界改善の兆し
とはいえ、希望の兆しも見えています。大手自動車メーカーが教育プログラムを通じて整備士の育成に力を入れ始めており、近々全国の自動車車体整備事業者と損保会社が整備代金の単価引き上げに合意しました。これは業界全体の改善に向けた重要なステップといえます。しかし、整備士の人材不足や顧客基盤の縮小、そして整備ニーズの変化には、依然として解決すべき課題が残されています。
今後も自動車整備業者を取り巻く厳しい状況は続くことが予測されます。このような業界全体の危機的な状態の中で、それに適応できるかどうかが各企業の命運を握ることでしょう。新たな市場環境にどう対応していくかが、今後の発展において重要なポイントです。