心不全患者支援の新たな未来型プログラム試験が成功
慶應義塾大学医学部を中心に、心不全患者の運動を支援する未来型プログラムの探索的医師主導治験が行われました。この研究には慶應義塾大学、産業医科大学、岐阜大学が共同で参画し、有効性と安全性が確認されました。
背景と重要性
「心不全」とは、心臓が体に必要な血液を十分に送り出せない状態を指し、息切れや浮腫といった症状を引き起こします。重症化すると生命にも関わるため、適切な治療だけでなく、運動や食事などの生活習慣の改善も不可欠です。
特に心臓リハビリテーションが重要視されますが、実際には治療を受ける心不全患者は10%未満とされています。患者は自宅で医師から指導された運動を実践するものの、その成果や運動量を把握するのは難しいのが現状です。そこで、医療従事者が患者の運動状況を評価できる支援ツールの必要性が高まっているのです。
治験の概要
本治験の対象は、心不全を抱える18歳以上の患者で、「運動支援アプリ」を使用するグループ(A群)と使用しないグループ(B群)に分け、24週間にわたって経過観察を行いました。アプリの役割は、運動に関する情報提供と在宅での運動支援です。患者は装着したスマートウォッチからのデータをアプリに入力し、さらにはコラボレーションしたクラウドシステムから運動の量や強さの提案を受けることが可能でした。
治験の結果、104名が登録され、最終的に100名が解析対象となりました。アプリを使用した患者群とそうでない群では、両群ともに心血管イベントが発生しましたが、その頻度は同等でした。12週目の評価では、運動プログラムによる心機能改善の有意性は確認されませんでしたが、24週後の握力や膝伸展筋力には有意な改善が見られました。
今後の展望
この治験の結果を基に、「運動支援アプリ」の医療機器としての承認を進め、心不全患者の90%以上が受けられていない適切な運動療法を届けることを目指します。新たな医療機器の開発により、より多くの患者が心不全の進行や再入院を防ぎ、健康で豊かな生活を送れるようになってほしいと願います。
この研究は、国立医療研究開発機構や科学技術振興機構からの支援を受けて行われています。これにより、心不全治療に新たな光がもたらされることが期待されています。