化学品生産の新時代
2025-11-21 16:30:27

産総研が実証した革新的な小型連続精製装置で化学品生産が変革

産総研が開発した省力化技術による連続生産の未来



国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は、株式会社iFactoryとの共同研究により、小型連続精製装置を開発しました。この装置は、省力化かつ高効率で機能性化学品の精製を実現する技術です。特に、高機能触媒配位子として知られるT-BINAPの連続精製を実証しました。

高まる自動化のニーズ


日本では、労働力人口の減少が予測されており、製造業において人手に依存しない省力化の必要性が増しています。この問題に対処するため、連続生産技術が重要な対策として注目されています。その背景には、医薬品の原薬や中間体を含む機能性化学品の製造が進化するための課題解決が求められていることがあります。

従来、機能性化学品の製造はバッチ生産方式が主流でした。この方式は、製品の柔軟性が高いものの、それに伴う人員やエネルギーのコストが大きな課題でした。一方で、連続生産方式は、生産ラインが常時モニタリングされ、効率的に運用できますが、初期投資が大きくなる場合がありました。

小型連続精製装置の実証


新たに開発された小型連続精製装置は、省力化を図るため、原料供給から抽出、濃縮、晶析、ろ過、乾燥、充填といった7つの単位操作を連結し自動化を実現しました。1辺1メートルのフレームに小型化されたこの装置は、導入コストや作業労力、時間を大幅に削減することが見込まれています。

研究チームは、この装置を用いてT-BINAPの製造を連続的に行い、純度99%以上の乾燥粉体を効率的にも取得しました。この技術の実験では、わずか7時間の連続稼働で730gの製品を得ることができ、バッチ方式と比較して圧倒的な処理速度の向上が確認されました。

具体的な精製プロセス


今回の精製プロセスでは、次の主要な単位操作が行われました:
  • - 連続抽出:溶液からアミンを除去し、廃液を最小限に抑える手法です。
  • - 連続濃縮:スピーディーに濃度を2倍にするための操作です。
  • - 連続晶析:溶剤を加えることでT-BINAPの結晶を析出させます。
  • - 連続ろ過:連続的に結晶を回収する機構です。
  • - 連続乾燥:乾燥機を二台使用し、効率よく結晶を乾燥させます。
  • - 連続充填:最終的に製品を包材に詰める作業となります。

これらの処理はすべて人の手に触れることなく行われ、作業の省力化と効率化を実現しています。

今後の展望


今後は、特に多様な機能性化学品への対応を視野に入れ、この装置を活用した工程をさらなる実証検討が進められる予定です。具体的には、年間1トン程度の生産量が求められる高付加価値品の商業化を目指し、連続生産システムの拡大が見込まれています。

産総研は2025年11月28日に、第7回産総研化学研究シンポジウムでこの技術の詳細を発表する予定です。このような革新的な技術は、これからの化学品製造業界の変革を促す重要な一歩となることでしょう。

さまざまな取り組み


産総研が推進する研究の一環として、連続生産技術に関するトレーニングプログラムも設けられており、業界内外での普及が期待されています。特に新たな生産設備に触れ、実践的なスキルを学ぶ機会を提供することで、製造業の未来を支える人材育成にも寄与しています。

このように、産総研の展開する新しい技術は、持続可能な化学産業の未来を描く上で、大きな可能性を秘めています。


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会社情報

会社名
株式会社AIST Solutions
住所
東京都港区西新橋1-1-1日比谷フォートタワー 10F
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