民事裁判のIT化に向けた弁護士への意識調査
弁護士ドットコム株式会社が実施した「民事裁判IT化に向けた弁護士への意識調査」によると、弁護士の半数近くが依然として紙のFAXを利用しています。2026年6月に全面施行予定の民事裁判のIT化では、書類の電子提出が義務化されるため、弁護士には新たな業務スタイルへの適応が求められます。
調査の背景
民事裁判のIT化の主な柱は「e提出」「e事件管理」「e法廷」の3つで、これにより弁護士は従来の紙書類から電子データに移行する必要があります。弁護士ドットコムは会員弁護士316名を対象に調査を行い、どの程度準備が進んでいるのかを探りました。この調査は2024年の夏に実施されました。
調査結果の概要
調査で明らかになったいくつかのポイントがあります。まず、弁護士の49.4%が「紙のFAXを使っている」との回答をしました。また、約6割が事件記録に関して紙の書類を使用することが多いと回答し、実際には紙資料の方が優先されています。このような伝統的な方法の強さが依然として影響しています。
次に、民事裁判書類という電子提出システム「mints」の利用に関しては、65.5%の弁護士が「使用したことがない」としており、過半数が新システムになかなか適応できていない状況です。これには、電子化への抵抗感や技術的な使いこなしへの不安が背景にあるのかもしれません。
ウェブ会議導入への高評価
ただし、民事裁判にウェブ会議を導入することには高評価が寄せられています。調査によれば、65.2%が「良い」とその導入を支持し、約9割が肯定的な姿勢を示しています。メリットとしては、移動時間の削減や重い資料を持たずに済む点が挙げられ、特に子育て中の弁護士からは地方出張の減少が助かるという声もありました。
同時に、ウェブ会議の導入に対するネガティブな意見も見られ、技術的なトラブルや、相手方との心理的距離感の違いへの懸念が指摘されることもあります。弁護士同士の経験やキャラクターをつかみにくくなったという意見もあり、今後の改善が必要です。
プロフェッショナルテック総研について
弁護士ドットコム株式会社内にあるプロフェッショナルテック総研は、専門技術とテクノロジーの融合によるデジタルトランスフォーメーション(DX)を研究し、専門家の役割を見直すことを目的として日々活動を行っています。今後も法曹界のデジタル化に向けた研究が進むことでしょう。