電力需給の新たな一手:データセンター間のワークロードシフト
2022年10月、東京電力パワーグリッド(東電PG)と日立製作所は、データセンター(DC)間で行うワークロードシフトによって、電力系統連携型のエネルギーマネジメントを実現する実証実験を開始しました。この取り組みは、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、再生可能エネルギーの導入を加速する狙いがあります。特に、生成AIの急速な普及に伴い、DCの電力需要が増加している中、この技術の確立は重要な意味を持っています。
1. 実証実験の概要
この実証実験では、東京都と神奈川県内の3箇所において、DC間でのワークロードシフトを行い、電力需給のバランスを最適化することを目指しました。具体的には、再生可能エネルギーを有効活用し、大容量ネットワークや蓄電池を用いて調整力の創出を加速しました。実験では、膨大な電力を消費する生成AIアプリケーションのダウンタイムがほとんど無く、ワークロードのシフトが可能だったことも確認されました。
2. 実験の目的と成果
実証の主要な目的は以下の通りです:
- - 多拠点間での最適ワークロードシフト:3エリアのDC間での電力調整力を最大化するためのワークロードシフトを検証。
- - 高速な電力需要の調整:需給調整市場の入札要件を満たすために、電力需給の変化に迅速に対応。
- - 生成AIアプリケーション向けのシフト:生成AIによるデータ処理に必要な電力の消費を調整。
実験の結果、3エリア間でのワークロードシフトが最適に行われることが確認され、調整力も見込まれる水準に達しました。特に、生成AIアプリケーションにおいては、1秒以下のダウンタイムでワークロードをシフトでき、既存の電力需要の減少と新しい電力需要の増加を、10秒以内に実行できることが示されました。
3. 技術の意義と今後の展望
東電PGと日立は、この実証を通じて確立した技術とノウハウを活用し、電力需給において新たな調整力としての役割を持つことを目指しています。また、事業化の検証を進め、ワットとビットの連携を通じたカーボンニュートラルの実現に向けて取り組んでいく予定です。これは、エネルギーと情報通信のインフラ整備を一体的に進め、持続可能な社会基盤を築く一助となるでしょう。
4. おわりに
このような先進的な技術の実現は、電力需給の最適化にとどまらず、私たちの社会全体のエコシステムにおいても大きな変化をもたらす可能性を秘めています。今後も社会の変化に対応した技術開発が期待されています。