未知のバクテリア「ミニシンコッカス」が解き明かす生態系の謎
はじめに
最近の研究によって、北海道大学や産業技術総合研究所(産総研)、海洋研究開発機構の共同チームが開発した新しいバクテリア「ミニシンコッカス アーカエイフィルス」が注目されています。この新種のバクテリアは、メタン生成アーキアに寄生する独自の生態を持つことが明らかになりました。本記事では、研究の背景、発見の経緯、今後の展望について詳しく解説します。
研究の背景
CPR(Candidate Phyla Radiation)と呼ばれる未知のバクテリアのグループは、自然環境や人工的な廃水処理生態系に幅広く存在していますが、その多くは培養が非常に困難であり、どのように生態系に作用しているかは未解明でした。細胞やゲノムサイズが小さく、他の生物に寄生または捕食することが予測されていますが、研究が進展しにくい状況が続いていました。
研究の経緯
今回の研究チームは、廃水処理システムのメタン生成アーキアに寄生するバクテリアの発見に成功しました。これにより、CPRバクテリアがどのようにして宿主アーキアの生理活性を低下させるかが明らかになりました。特に、メタン生成アーキアの「メタノスピリラム ヒュンゲッティ」を宿主として、もう一方のバクテリアの純粋二者培養を達成した点が評価されています。なお、メタン生成アーキアは廃水処理中核を担う重要な微生物です。
ミニシンコッカス アーカエイフィルスとは
新たに命名された「ミニシンコッカス アーカエイフィルス」は、直径1µm以下の超微小な絶対寄生性バクテリアです。このバクテリアは、特定の宿主アーキアにのみ寄生する特異性を持ち、他の種には寄生しないことが確認されました。研究者たちは、このバクテリアが宿主の細胞の特定部位に付着する様子を観察し、その寄生メカニズムに迫ろうとしています。
新門「ミニシンコッコータ」の命名
今回の研究の成果により、「ミニシンコッカス アーカエイフィルス」が属するCPRの大規模な系統群に、新たに「ミニシンコッコータ」という新門名が提案されました。これは、CPRバクテリアの生理や生態に関する理解をさらに深化させるための重要なステップであり、今後、さまざまな廃水処理システムにおいて新たな診断・制御技術の開発が期待されます。
未来に向けて
今後の研究においては、「ミニシンコッカス アーカエイフィルス」がおかす寄生メカニズムの解明や、自然環境における物質循環への影響についても評価していく予定です。また、ミニシンコッコータ門に属する他の微生物の分離培養も試みられる予定で、これらの研究が進むことで、微生物エコシステムの新たな理解へとつながることが期待されます。
まとめ
未知のバクテリア「ミニシンコッカス アーカエイフィルス」の発見は、微生物生態学の新たなフロンティアを切り開くものであり、アーキアとバクテリアの関係性についての理解を深めることに寄与します。本研究が進むことで、CPRバクテリアの過去や生態にまつわる謎が明らかになり、将来的には廃水処理システムの改善にも直接つながることが期待されます。
詳細な成果は、2025年2月10日に国際的な科学雑誌『International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology』に掲載される予定です。