BCGが浮き彫りにした消費者心理の変化
経営コンサルティングファームであるボストン コンサルティング グループ(BCG)が、2024年8月に実施した「BCG消費者心理調査」の結果を発表しました。この調査は、日本全国の18歳以上の消費者8,000人を対象に行われており、2020年から続く「BCG COVID-19 消費者心理調査」シリーズの11回目となります。この最新調査は、日本におけるインフレの持続的な影響や消費者の価格感覚の変化、さらにはAIテクノロジーに対する期待感などを浮き彫りにしています。
物価上昇の実感
調査結果によると、食品や飲料、アパレル・ファッション、旅行のカテゴリーにおいて、実に80%以上の消費者が価格の上昇を実感しているとのことです。これは、前回の2023年調査に比べてほとんど変わらない結果であり、依然として多くの消費者が日常生活の中で値上げを感じていることが示されています。ただし、2022年から増加していた「より安い商品の選択」という消費行動の変化については、今回はあまり見受けられないこともわかりました。このことは、物価上昇に対する消費者の反応が次第に落ち着きを見せていることを示唆しています。
「一物多価」の許容
調査では、同一の商品でも異なる価格が設定される「一物多価」を受け入れられると感じている消費者が過半数に達したことも注目すべき点です。例えば、イートインとテイクアウトの価格差を84%の人が許容し、また同じコンビニ弁当でも都心と郊外での違いを75%が受け入れると答えています。しかし、価格差の理由が明確でない場合には、消費者の許容度が低くなることも判明しました。このため、企業が価格設定の理由をどう説明するかが今後ますます重要になるでしょう。
AI活用への期待
BCG消費者心理調査では、企業が導入するAI技術に対する期待感も分析されています。生成AIを利用した経験がある消費者の中では、企業のAI技術が生活を豊かにすると考える人が多く、特に「問い合わせへの回答」や「クーポンの最適化」といったサービスに高い期待を持っています。特に、AIを活用することで、リアルタイムでの価格設定が可能になるとの見方が強いことが明らかになりました。
インフレの影響と今後の展望
BCGのマネージング・ディレクター、紀平啓子さんは、今回の調査結果について「日本におけるインフレはもはや一時的な現象ではなく、消費者の意識が大きく変わったことを示している」と述べています。企業は、この新しい状況に応じてどう価格を設定し、消費者に対してどのように納得のいく説明を行うかが今後の鍵になるでしょう。特に原価上昇などのコストの違いが価格設定に影響を与える中、「フェアな値付け」に対する消費者の理解を深める努力が求められています。
まとめ
BCGの調査結果は、変化する日本の消費者心理や価格設定に対する柔軟性を明らかにしました。物価上昇を実感する中で企業がどう対応するか、その過程で新たなテクノロジーの活用がどのような影響を与えるのかといった点に今後も注目が集まります。調査の結果は、これからの市場戦略に対する示唆を多く提供しており、経営層にとっては見逃せない情報となっています。