能登の名店『一本杉 川嶋』、金継ぎで歴史の器を再生
石川県金沢市に本社を置く株式会社箔一は、2024年1月に発生した能登半島地震の被害を受けた料理店『一本杉 川嶋』の器の修復を金継ぎという伝統技術を用いて行っています。この支援は、単なる寄付にとどまらず、地域の文化を守り継ぐ新たな形の支援として注目されています。
被災した名店の復活の試み
『一本杉 川嶋』は、石川県七尾市に位置し、料理と器の美しさで知られる名店です。この店では、地元の豊かな四季を反映した料理が出され、器は魯山人や永樂といった名工の作品を使用し、訪れる人々に深い感動を提供してきました。しかし、元日の地震により、92年の歴史を持つ店舗は崩壊し、貴重な器が多数損傷を受ける深刻な事態に見舞われました。
その後も川嶋氏は地域への炊き出しや復興活動に携わり、自らの料理で地域を支える姿勢を見せていました。そんな中、箔一の社長からの金継ぎによる支援の提案は、彼にとって大きな励ましとなりました。「あの一本の電話に涙が出ました」と川嶋氏は語ります。
金継ぎという文化的支援
金継ぎは、日本の伝統的な技法で、漆を用いて破損した器を修復し、金粉で仕上げる方法です。この作業により、新たな価値が生まれ、器には新しい物語が刻まれます。今回、川嶋氏から提供された器は段ボール5箱分に及び、その中には新年に使用予定だった辰年の器や思い入れの深い名品も含まれていました。「器は、出会いそのもの。もう二度と手に入らない」という川嶋氏の言葉からは、器への深い愛情が感じられます。
箔一の熟練した職人たちが、一つひとつの器と向き合い、心を込めた修復作業を行っています。この金継ぎは、2025年10月に完成予定です。
地域文化の再興への道
『一本杉 川嶋』は、現在店舗の営業をお休みしていますが、川嶋氏は全国各地のイベントや食の場で料理を提供しながら、2027年の再建を目指しています。彼は、「器とともに紡いできた物語を大切にし、地域の食文化の再興に向けて取り組んでいます」と意気込みを語っています。
修復された器は、再び料理と共に使われることになり、訪れる人々にその背景に秘められたストーリーを語り継いでいく予定です。箔一は、ものづくりを通じて地域の職人や作り手と連携し、持続可能な文化支援を続けていく意向です。
この取り組みは、地域の伝統と文化を守り、未来へとつなげる重要なプロジェクトであり、ぜひ注目していただきたいものです。