ナミハダニの新発見
2025-03-17 10:34:32

新たな植物防御因子、ナミハダニの分泌物から発見

新たな植物防御因子、ナミハダニの分泌物から発見



研究の背景と重要性


植物を守るための防御反応を誘導する因子、エリシターが近年注目されています。この研究は、ナミハダニ(Tetranychus urticae)という重要な害虫が持つエリシターについてのもので、農薬に頼らない新たな有機農業技術の開発につながる可能性があります。特に、ナミハダニのだ液中に含まれるテトラニンというタンパク質の中から、新たにTet3とTet4という二つの分子を同定し、それらの機能を分析しました。

主な研究結果


東京理科大学の研究チームでは、Tet3とTet4の遺伝子発現量を調査した結果、ハダニが比較的好むインゲンマメにおいて、これらの遺伝子がより高い発現を示したことが分かりました。特に、Tet3とTet4はインゲンマメの防御応答に大きな影響を与える因子として機能することが確認され、エリシターとしての役割を果たすことが明らかになりました。

さらに、研究チームはインゲンマメとキュウリにおけるTet3とTet4の発現量を比較しました。結果、キュウリには低い発現量が見られ、これにより植物の防御応答のレベルとも相関が見られました。このことから、ナミハダニが選好する植物に対して、エリシターの存在が防御応答を処理する上で重要であることが示されました。

テトラニンのメカニズム


研究者は、Tet3とTet4がインゲンマメの防御反応に与える影響を詳細に調査しました。RNAi法を用いて這ったハダニのTet3およびTet4をノックダウンし、その影響を観察しました。ノックダウンしたハダニがインゲンマメに食害を与えた結果、防御遺伝子であるPR1の発現が抑制されることが確認され、Tet3とTet4が防御応答を誘導するエリシターの役割を持つことが示されました。

さらに、ハダニが好むインゲンマメとあまり好まないキュウリでの比較実験でも、Tet3はCa²⁺の細胞内流入を促進し、防御反応を強める一方で、Tet4は逆にCa²⁺の流入は少なく、ROS(活性酸素種)の生成が高かったことが明らかになりました。これにより、テトラニンは様々なメカニズムで植物の防御応答に寄与することが示されました。

今後の展望


ナミハダニは、農作物にとって深刻な害虫であり、その耐性を克服するためには新しいアプローチが求められています。農薬に代わる方法として、エリシターの利用がますます重要視されており、ナミハダニの持つエリシターの攻撃を植物自身が感知する仕組みの解明が、次世代の農業技術の革新に寄与することでしょう。研究を主導した有村教授は、エリシターの生物間相互作用を解明することで、生態系や生物多様性の理解が進むと述べ、今後の研究と技術開発に強い期待を寄せています。

研究の意義


本研究は、農業における持続可能性を高めるための重要な一歩です。農薬に依存しないで害虫に立ち向かうための戦略として、エリシターを用いた技術の発展が期待されます。今後の研究によって、エリシターを活用した新しい農法が確立され、環境にも優しい持続可能な農業が促進されることが望まれます。

本研究の成果は国際誌『The Plant Journal』に掲載され、農業界や科学界から注目されています。


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会社情報

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学校法人東京理科大学
住所
東京都新宿区神楽坂1-3
電話番号
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