第16回辻󠄀静雄食文化賞 贈賞式が開催
2025年8月19日、東京都小金井市にある辻󠄀調理師専門学校で第16回辻󠄀静雄食文化賞の贈賞式が行われました。この賞は、日本の豊かな食文化の発展に寄与し、より良い食を探求する活動を称えるために設立されました。受賞作に選ばれたのは、『「台湾菜」の文化史国民料理の創造と変遷』で、著者の陳玉箴氏と翻訳を手がけた天神裕子氏が受賞しました。そして、専門技術者賞には、「サスエ前田魚店」の店主である前田尚毅氏が選ばれました。
受賞作品の紹介
台湾料理の文化と変遷
陳氏の著作は、台湾料理の背後にある歴史や文化を深く掘り下げています。彼は、政治体制の変化が如何に食文化に影響を与えているのかを鮮やかに描き出しました。受賞の喜びを語る陳氏は、翻訳を担当した天神氏に感謝し、作品完成に至るまでのプロセスを大切にしました。彼は「台湾料理は台湾人の100年の歩みを映すものであり、料理を通じて台湾の近現代史にも興味を持っていただければ」と話しました。
漁業者との連携で生まれた新しい料理文化
一方、前田尚毅氏は、地元漁業者との連携を強化し、質の高い魚を調理人たちに提供するための仕組みを一から築き上げました。彼の言葉には、漁業者との協力が食材の質を高め、それが地域全体に良い影響を与えているという信念が表れています。「食材のバトンリレー」の概念を示し、食材と料理人の協力関係の重要性を強調しました。受賞を受けて、彼は「この賞は私たちの活動を支えてくれた漁師たちにとっても喜ばしいこと」と述べています。
賞の背景と意義
辻󠄀静雄食文化賞は、2010年に設立され、辻󠄀調グループの創業者である辻󠄀静雄の活動を記念したものです。この賞は、調理や製菓などの現場で活躍する技術者を顕彰する専門技術者賞も設けており、食文化の多様性と豊かな発展を目指しています。
今年の贈賞式には、多数の専門家が集まり、受賞者の功績を称えました。また、文化人類学や教育の各分野からの専門家たちも審査に参加し、品質の高い作品が選ばれることを重視しています。
結語
第16回辻󠄀静雄食文化賞は、台湾料理の文化史と地域食文化に貢献した二つの受賞者に対して、一つの新たな食文化の創出が認められたことを示しています。この受賞式を通じて、今後も食文化の多様性がより豊かに育まれていくことが期待されています。